研究課題
受精卵において,特に精子由来のゲノムは大規模なDNA脱メチル化を経験することが知られている。この機構の一端としては,DNAメチル化の指標となる5-メチルシトシン(5mC)が酸化酵素であるTet3タンパク質により5hmCへと変換されることが重要であることが知られているが詳細な機構は明らかになっていない。これまでの我々の研究により,このTet3は生殖細胞特異的発現タンパク質GSEとその相互作用因子で新規にヒストン修飾酵素として同定したMettl23と協調して働き,そのヒストン修飾により5mCから5hmCへの変換が制御されることを見出した。これら結果については現在査読中である。ES細胞においても5hmC化は多能性維持に重要であり,GSEとMettl23はES細胞でも発現している。そこで本研究では, GSE及びMettl23ノックアウト(KO)ES細胞におけるDNA脱メチル化に及ぼす影響について調べることとした。まず,各KOES細胞において5mCの酸化産物である5hmC, 5fC, 及び5CaCの蓄積量を,ゲノムDNAを用いたDot blot解析で調べたところ,5fC及び5CaCの産物が野生型と比べて少ないことが明らかになった。しかし,興味深いことに,Oct4, Nanog, Dnmt3bといった受精卵で5hmC化される領域においては,5fC及び5CaC産物がKOES細胞で増加していることがわかった。また,これら領域において5fCや5CaCをCに変換する酵素であるTDGの蓄積量を調べると,KOES細胞で減少していることが明らかになった。以上のことから,GSEやMettl23はES細胞において,特定の領域においてDNA脱メチル化機構に関与していることが示唆された。
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Cell Reports
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