研究課題/領域番号 |
15K18547
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高山 順 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 特別研究員 (20574114)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 受精 / 受精カルシウム波 / イオンチャネル / RNAiスクリーニング |
研究実績の概要 |
より効率的にスクリーニングを行うため、線虫の受精時に生じるカルシウム波の観察手法の改良を行った。これによりサンプルの準備にかける時間が飛躍的に減少した。さらに感度が向上したことにより微妙な差が検出しやすくなると期待された。また卵細胞の形質膜を赤色蛍光タンパク質により標識することで、その後の画像処理による卵細胞の認識が高速かつ簡便になった。322のチャネル遺伝子のうち、Ortiz et al (2014)およびHobert (2013)を元に、生殖腺で発現し、かつカルシウムを透過することが予想される42のチャネル遺伝子をリストアップした。このうち37についてRNA干渉による遺伝子破壊を行い、その際の受精カルシウム応答の観察を行った。この際に、新しい観察手法においても精子のTRP-3の遺伝子破壊により局所波に異常が生じることを確認した。一方、予想外のカルシウム波パターンを示す個体もあったが、大域カルシウム波が特異的に減少するかを突然変異体により確認する段階には至っていない。今後は観察動画を定量的に評価していく予定である。また計画に記した胚性致死を指標としたスクリーニングを行う。一方で、来年度以降に行う予定であった局所波と大域波の関係の解析を一部前倒しで行った。これは局所カルシウム波の発生を担う精子TRP-3チャネルの発現量を遺伝子組み換え技術を用いて調節することに成功したためである。この手法を用いて局所波と大域波の関係を解析した。その結果、精子のTRP-3チャネルが多いほど、受精後に生じる局所波が大きく、また大域波が素早く生じることが見出された。この局所波と大域波の関係は、カルシウム誘導カルシウム放出機構により説明できることがシミュレーションを用いた解析によりわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大域カルシウム波を担うチャネル遺伝子の同定には至っていないものの、第二段階の確認に至るべき遺伝子の候補は挙げられた。また観察手法とその後の定量化手法が大幅に改善された。
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今後の研究の推進方策 |
これまで観察した動画に画像処理を施すことで定量化を行う。これによりその次の段階である確認実験を行う候補を絞り込む。確認実験はヌル変異などの突然変異体を用いて行う。一方で胚性致死を指標としたスクリーニングを行うことも予定している。遺伝子が同定されれば、計画通り、機能解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
観察手法が大幅に改善されたため、予定していた蛍光指示薬を購入する必要がなくなったことが理由として挙げられる。また機能解析の一部を前倒しで行い、これに伴って計画していた胚性致死スクリーニングを次年度以降に予定したことで培養試薬やプラスチック器具が予定よりも少額となったことが理由として挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額のおよそ701千円のうち、論文出版費用(その他)として600千円を計画している。また機能解析に用いる試薬と人工遺伝子合成に101千円を用いることを計画している。
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