研究課題/領域番号 |
15K18554
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 照悟 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60632586)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 概日時計 / ウキクサ / 光受容体 / 局所光 |
研究実績の概要 |
地球上の多くの生物は地球の自転・公転に伴う周期的な環境変化を前もって予想し準備・適応するために概日時計機構を獲得してきた。高等植物では、時計機構と外環境(光)とを同調させるために重要な光受容体が、ほぼ全ての細胞で機能している。そのため、概日時計機構は細胞自律的で、全ての細胞に独立して存在していると考えられている。しかしながら、植物のすべての組織(細胞)で一様な光刺激(強さ、長さ、波長)を受容できるわけではない。このような状況下においても、植物の時計機構は各細胞が同期した時刻情報を維持し、個体として統率された生理反応を引き起こしている。 本年度はイボウキクサ(Lemna gibba)とコウキクサ(Lemna minor)のフロンドを用いて解析を進めた。申請時にはウキクサ(Spirodela polyrhiza)を用いる予定だったが、申請者らがコウキクサの形質転換法を確立し、コウキクサにおいても共同研究者らによってゲノム情報が利用可能になったためである。作成予定だった局所光照射装置は、直径300μm以下の照射円を光照射の目標としていたが、予想よりも植物体内で光の拡散が大きく、より広い範囲で光量のグラデーション照射が起こった。しかしながら装置の設計自身は終了し解析が進められた。今回は白色光を用いた解析によって、概日時計機構を維持する光量、リセットする光量の解析を行ったが、次年度は単色光を用いてこの現象の波長特性を解析していく、さらに光受容体の機能欠損ウキクサ植物を作出し、光入力と光量・光質の関係を解析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度に計画していた局所光の照射装置の設計と測定条件の調整はほぼ終了した。この装置を用いて白色の低光量下の植物の概日時計機構の遺伝子発現変動に関する基本的データを収集することができた。光源の単色光での測定はまだ行っていないが、問題なく解析は進むと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
申請時にはウキクサ植物が他のウキクサ族と比較して大きく解析に適していると考えられたが、コウキクサの形質転換方法が確立され過剰発現、CRISPR/CAS9を用いた機能欠損植物も作出可能であることを示唆するデータが得られ、シロイヌナズナとコウキクサを解析対象に変更することになった。今後はゲノムデータベースよりコウキクサにおける時計遺伝子、光受容体遺伝子のオルソログ探索から変異体作出を経て、単に現象を解析するだけでなく分子レベルでのメカニズムに迫る研究が展開していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
25年度から研究課題の解析に必須な人工気象機の購入を終え、解析に必要な消耗品も購入してきた。当初の計画にはなかったウキクサ植物の形質転換体の作出を行って来たため、本来の解析が若干遅れていることも有り研究費の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
形質転換ウキクサ植物を系統的に作出し異なった遺伝背景の植物で解析を行う予定であり、野生株に加えて多検体の解析を行う予定である。これに伴い、形質転換植物の維持管理にも消耗品を多く使用する予定であり、繰越分も含めて研究費を使用していく予定である。
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