研究課題/領域番号 |
15K18554
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 照悟 京都大学, 理学研究科, 助教 (60632586)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 概日時計 / ウキクサ / 光受容体 / 局所光 |
研究実績の概要 |
全ての細胞に独立して存在していると考えられている高等植物の概日時計機構は細胞自律性が高いことが近年報告されている。しかしながら、植物のすべての組織(細胞)は一様な光刺激(強さ、長さ、波長)を受容できるわけではない。このような状況下においても、植物の時計機構は各細胞が同期した時刻情報を維持し、個体として統率された生理反応を引き起こしている。 28度は主にコウキクサ(Lemna minor)のフロンドを用いて解析を進めた。申請者らがコウキクサの形質転換法を確立したため、概日発光レポーターを一過的に導入した細胞と並行して、概日発光レポーターを保持する形質転換植物体も用いて解析を行った。生物発光のタイムラプス画像からリズムの定量解析のための画像処理ツールを構築し、成長と発光リズムを同時解析する事が可能となりウキクサ個体の各フロンドを別々にリズム解析することが可能とした。一部は自動化にも成功している。 コウキクサの公開ゲノム情報を利用し、コウキクサにおける時計遺伝子ホモログのクローニングはほぼ完了し、野生株内での経時的な遺伝子発現解析も終えた。しかし、過剰発現体の作成では、コサプレッションが頻繁に起き、適切な過剰発現個体が得られない遺伝子もあったため解析が遅れた。概日時計をエントレインする最低光量については安全光と考えられていた緑色の光源でさえ時計を光同調できることがわかり、フィトクロムAの情報伝達系が機能していることが示唆された。赤色・遠赤色・青色光のLEDを用いた解析から、時計の周期が波長によって変化し、頑健性も大きく変化することが見出された。光受容体の欠損変異株作成にはCRISPR/Cas9を用いて作出を試みたが、変異導入が予定道理に起きず、スクリーニングを継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
28年度に計画していた解析は概ね終了したが、過剰発現体の作成でコサプレッションによって十分な形質転換体が得られなかった点と、論文出版が次年度にずれ込んだため、研究期間の延長を行ったため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
コウキクサの形質転換植物(過剰発現、CRISPR/CAS9を用いた機能欠損)、を用いて、計画していた解析を行う。細胞の分化状態と、光の感受性についても、解析を行い、論文の出版を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度から始めたウキクサ植物の形質転換体の作出に時間がかかり解析と論文出版の費用を使わなかったため研究期間の延長申請をおこない研究費の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
形質転換ウキクサ植物を系統的に作出し、異なった遺伝背景の植物で解析を行う予定である。執筆中の論文の掲載料の支払いに繰り越した金額を使用する予定である。
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