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2016 年度 実施状況報告書

ジベレリンによる共生シグナルネットワークへの干渉機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K18561
研究機関基礎生物学研究所

研究代表者

武田 直也  基礎生物学研究所, 共生システム研究部門, 助教 (60571081)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード植物微生物相互作用 / 共生 / 菌根菌 / 根粒菌 / 植物
研究実績の概要

植物と共生菌である根粒菌、アーバスキュラー菌根菌(以下、菌根菌)との相互作用は、共生菌からの養分供給によって宿主植物に大きな生育促進効果を与えることが知られている。この共生の成立では、宿主植物内への共生菌が侵入し、共生器官を形成することによって養分供給が可能となることから、共生菌を宿主植物体内に受け入れ、共生を成立させる感染過程が重要な過程となる。この感染過程ではさまざまな共生遺伝子が発現し、それらの遺伝子機能によって共生菌の侵入を制御している。我々は、これらの共生遺伝子発現を制御する因子として、植物ホルモン「ジベレリン」に注目した解析を行っている。ジベレリンは共生に正負、双方の作用をもたらすが、この作用は共生遺伝子発現によるものが大きいことが明らかとなった。そのため本課題では、この共生遺伝子発現制御に関する分子機構の解明と、この共生遺伝子の変動が共生菌の感染過程にもたらす作用についての解析を行った。
昨年度に発見したGA応答性のシス領域の解析を進め、菌根共生遺伝子であるRAM1遺伝子は共生シグナルおよびGAシグナル双方の交差点となっていることが明らかとした。さらに、この研究を根粒共生にも拡張し、NINプロモーター上にGA応答シス領域の特定に成功した。この研究から、NIN遺伝子が共生シグナルとGAシグナルの交差点となることが判明した。
現在、菌根共生におけるGAシグナルと共生シグナルとの干渉作用についての論文を投稿中であり、この論文の受理に向けた実験や考察の追加などを行っていく。また、NIN遺伝子を中心としたGAと共生シグナルの作用についても解析を進め、CRISPR/CAS9を用いたゲノム編集技術によるシス領域の除去などを試みる。これらの研究によって、異なるシグナルネットワーク間での干渉作用の分子メカニズムを解明する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

昨年度の解析と昨年度に報告された研究成果から、菌根共生に特異的に働くRAM1遺伝子上にジベレリン応答性のシス領域が複数存在することが分かった。この結果から、RAM1遺伝子は共生シグナルおよびGAシグナル双方の交差点となっていることが明らかとなった。GA合成異常を示す共生変異体nsp1でのRAM1遺伝子の空間的発現を詳細に解析すると、共生シグナル活性化時に表皮付近でのRAM1発現が低下していた。nsp1変異体では、菌根菌の感染が表皮において阻害されることから、ectopicなGA濃度の上昇がRAM1などのGA応答性遺伝子群の発現低下を生じさせ、そのために感染率が低下していると考えられる。現在、この成果をまとめ、論文を投稿中である。
RAM1プロモーター上で同定した低いGAシグナル環境下で応答するシス領域をタンデムに挿入した35S minimal promoter GUSでのGA応答性を確認した。この結果からよりGA応答性の領域を狭め、シスエレメントを特定することを試みたが、明確な低GA濃度下における応答は見られなかった。しかし逆に高GA濃度下において応答しうることが判明した。さらに、根粒形成に必須の遺伝子NINの発現制御にもGAが深くかかわることが明らかとなってきている。GA添加した植物ではNIN依存的に根の細胞分裂が誘導され、根粒様の細胞塊が形成される。この細胞分裂による細胞塊の形成を指標に、NINプロモーター解析を行ったところ、NINプロモーター上にGA応答シス領域の特定に成功した。この領域はまだ100bp以上と広い領域ではあるが、これまでのNINプロモーター上で同定された転写因子結合領域とは全く異なる位置する新規のシス領域であることが明らかとなった。

今後の研究の推進方策

菌根共生におけるGAシグナルと共生シグナルとの干渉作用についての論文を投稿中であり、この論文の受理に向けた実験結果の追加や考察などを行っていく。35S minimal promoter fusionによる解析も続け、GA応答性のシスエレメントが同定できた際は、酵母1ハイブリッド系によるトランス因子の同定を試みる。
また、根粒形成においても明らかとしたNIN遺伝子を中心としたGAシグナルの共生シグナルへの作用についても解析を進める。NINプロモーター上のGA応答性シス領域はまだ広い範囲ではあるため、この領域をさらに狭める実験を行っていく。さらに、このシス領域をゲノム変種技術であるCRISPR/CAS9を用いて除去することを試みている。現在、作成途中の形質転換個体を調べた限り、ミヤコグサにおけるCRISPR/CAS9による特定のゲノムDNA領域の除去は可能であると考えられる。そのため、この変異体を取得して解析することで、GA応答がなくなったNIN遺伝子の働きが根粒形成においてどのような変化を及ぼすかを観測することが、根粒共生におけるNINを介したGA応答の機能を明らかにできる。これらの研究によって、異なるシグナルネットワーク間での干渉作用の分子メカニズムを解明する。

次年度使用額が生じた理由

所属機関の異動のため、購入予定であった機器の購入を見送った。研究が予定より早く進み、研究支援員の雇用期間が当初の予定より短くできたので人件費を圧縮できた。

次年度使用額の使用計画

所属機関の異動に伴い、研究を遂行するにあたって不足する機器などが生じたため、それらの購入に充てる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] 根粒共生・菌根共生における共生制御物質の解析と共生能向上効果の検証2016

    • 著者名/発表者名
      武田直也,永江美和,川口正代司
    • 学会等名
      植物微生物研究会
    • 発表場所
      東北大学 宮城県仙台市
    • 年月日
      2016-09-07 – 2016-09-09
  • [学会発表] Gibberellin guidance is required for the spatial regulation of symbiosis gene expression and infection of arbuscular mycorrhizal fungi in Lotus japonicus2016

    • 著者名/発表者名
      Naoya Takeda, Miwa Nagae, Mikiko Kojima, Hitoshi Sakakibara, Masayoshi Kawaguchi
    • 学会等名
      International Society for Molecular Plant Microbe Interactions XVII Congress
    • 発表場所
      USA ポートランド
    • 年月日
      2016-07-17 – 2016-07-21
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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