研究課題
本研究課題では、ペプチドによるSnRK2タンパク質の活性化制御のメカニズムの解明に関して、研究を行った。ペプチドのRNAi抑制変異体を作成し、浸透圧ストレス時のSnRK2の活性化を解析した結果、RNAi抑制変異体では、浸透圧処理後1分から10分以内の早い段階でおこるSnRK2タンパク質のリン酸化が抑制されていることを明らかにすることができた。この結果は、標的ペプチドが、SnRK2の上流で機能していることを示すだけでなく、細胞内でおこる素早いリン酸化シグナル伝達系も逝去していることを示す。さらにペプチドとSnRK2をつなぐ相互作用因子の探索を行った。in silicoデータ解析を行い、候補タンパク質の絞り込みを行った結果、約30個の候補タンパク質を見いだすことに成功した。その後、各遺伝子の遺伝子破壊変異体を作成し、ペプチドおよびSnRK2タンパク質が制御する下流マーカー遺伝子の発現変動を指標に、ペプチド-SnRK2タンパク質に関与する相互作用因子のスクリーニングを行った。マーカー遺伝子は、アブシジン酸(ABA)合成酵素や、乾燥およびABA処理誘導性遺伝子の中から代表となる3遺伝子に着目し、発現解析を行った。その結果、2つの候補遺伝子が両方破壊された2重遺伝子破壊変異体において、乾燥ストレス条件下でのマーカー遺伝子の発現が顕著に低下していることを明らかにした。これはこの候補2遺伝子が、ペプチド-SnRK2シグナル伝達系に関与することを示唆している。この原因因子2遺伝子は、受容体キナーゼをコードする遺伝子であることから、ペプチドの受容体候補であることが考えられた。以上の研究結果は、ペプチド-受容体-SnRK2キナーゼコンプレックスを同定することに成功したことを示す。
すべて 2018
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Nature
巻: 556 ページ: 235-238
10.1038/s41586-018-0009-2.