研究課題
植物細胞が持つ高い分化可塑性は、植物が発生の可塑性や再生能力を発揮する上で重要な性質である。その一方で、多細胞体制の秩序を維持するためには、完成した組織では分化細胞は分裂せずに特殊化した機能を発揮し組織の構造を保持しなければならない。私はこれまでの研究によって、ヒストン修飾酵素であるポリコーム抑制複合体2(PRC2)が、最終分化細胞が分裂するのを防ぎ分化状態を維持する機能を持つことを明らかにした。PRC2機能欠損体では、最終分化細胞が分裂を再開して脱分化し、カルスと呼ばれる細胞塊や胚様体を形成するという表現型を示すことをこれまでに見出しており、野生型植物でも類似の現象が起こるかどうかは興味深い点であった。また、細胞分裂再開と細胞脱分化という2つの現象にはどのような関連があるのか、という点を明らかにすることを目指して本研究を行った。本研究では、傷ストレスを受けたときに野生型の植物でも高度に分化した細胞が分裂する例を新たに見出すことができた。たとえば、イワタバコ科植物では葉が傷つくと高度に分化した表皮細胞が分裂し脱分化して茎頂メリステムを構築することが新たに分かった。一方、シロイヌナズナの葉柄は切断面に近い部位の表皮細胞が分裂するものの、カルスを形成するのみであり、そこからの器官再生は行わなかった。本研究によって、最終分化細胞の中にも刺激を受け取って分裂を再開できる細胞とできない細胞があること、そして、分裂再開は必ずしも細胞脱分化を引き起こすものではなく、ある程度独立した現象であるということが明らかになった。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Plant Cell
巻: 1 ページ: 54-69
10.1105/tpc.16.00623
Development
巻: 143 ページ: 1442-1451
10.1242/dev.134668
BSJ review
巻: 7 ページ: 161-176
http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170117_2/