研究課題/領域番号 |
15K18566
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研究機関 | 日本医療科学大学 |
研究代表者 |
鈴木 研太 日本医療科学大学, 保健医療学部, 助教 (60548965)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 鳴禽 / 脳可塑性 / さえずり / 歌神経 / カナリア / ジュウシマツ / ハシボソカラス / 歌学習 |
研究実績の概要 |
鳴禽の歌神経系をモデルとして、脳の可塑性を制御する内分泌機構を解明するために研究を行った。鳴禽の多くは、ヒナの時期にのみさえずり(歌)を学習することができるが、カナリアなどの一部の鳴禽は、成鳥になった後も、毎年新たな歌を学習することができ、環境の変化に応じて脳の神経の形態と機能をダイナミックに変化させて、歌の再学習を可能にしている。季節繁殖を行い、歌行動の発現と歌の音響特性に季節変化があり、脳の可塑的な変化を伴って歌の再学習が生じるカナリアと、歌に季節変化がなく、歌の再学習の生じないジュウシマツおよびその野生種であるコシジロキンパラ、脳には歌神経系が存在し、歌行動に関する報告は無いが、脳の可塑性が高い状態に保たれている可能性のあるハシボソガラスを対象に研究を行った。 鳴禽の歌の解析を行うための手法の開発を行い、歌行動の量と様々な音響特性を抽出し、定量化することが可能となった。ローラーカナリアについては、歌を継続的に録音し、歌行動の量と音響特性の解析を行い、ハシボソガラスについては、歌とその学習の存在が確認されていないため、ヒナにおいて継続的な録音と音声解析を行い、その特徴を明らかにした。 申請者は、脳の可塑的変化のメカニズムのひとつとして、エネルギー代謝やストレス反応の調節が重要な役割を果たすと考え、歌神経核におけるストレス関連遺伝子群の発現解析を行った。ジュウシマツおよびコシジロキンパラの歌神経核において、ストレス関連遺伝子群の発現を確認した。関連する遺伝子についてcDNAクローニングを行い、塩基配列を決定した。 現在、カナリアにおいて、歌行動の量と音響特性、血中ホルモン濃度、生殖腺重量、歌神経核の形態の季節的な変化と、それに伴う歌神経核の可塑性に関係すると考えられる候補遺伝子群の発現変化の関係をリアルタイム定量PCR法によって調べているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度始めの研究開始時に申請者の所属の変更があり、動物の飼育および生理学的な実験を行う体制を整えるまでに時間を要した。研究計画について多少の前後があるものの、生理学的な実験を進めるための行動学的実験や必要な基盤を固めることができたため、今後の本研究課題の進展にとって良い方向に進んでおり、やや遅れた部分があるものの、おおむね順調に進展しているとも言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた成果に基づいて、引き続き、歌神経核の可塑性に関わると考えられるホルモンとその候補遺伝子群の発現およびその季節変化について明らかにし、鳴禽における脳の可塑性制御の内分泌機構の解明を進める。得られたデータについて、成果発表、論文執筆を進める。本研究課題とその成果の内容において一般にも広く研究について知ってもらうために一般向けの講演についても引き続き積極的に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に納品を予定していた器具の納入が遅れ、使用額が変更となったため、やむを得ず多少の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に物品費として器具の購入を予定している。
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