研究課題/領域番号 |
15K18567
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
林 誠 筑波大学, 生命領域学際研究センター, 助教 (50714838)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 精原幹細胞 / 網羅的遺伝子発現解析 / 魚類 / ニジマス |
研究実績の概要 |
魚類において、精原幹細胞を識別するための分子マーカーを単離することを目指し、ニジマスを用いて研究を行った。ニジマスは、精原幹細胞を機能的に同定することができる、精巣細胞移植技術が確立されている限られた魚種の一つである。精巣細胞を、孵化稚魚の腹腔に移植すると、一部の精原細胞のみが、宿主の生殖腺に生着し、機能的な精子を継続して作り続けることができる。このことから、宿主の生殖腺に生着した細胞こそが精原幹細胞であると考えられる。そこで、本研究では、「宿主生殖腺に生着した精原細胞(精原幹細胞)」における遺伝子発現と、「移植に用いた全精原細胞(大部分が生着能を持たない)」における遺伝子発現を、Quartz-seq法により網羅的に解析することで、精原幹細胞を特徴づけるトランスクリプトを74種類同定することに成功した。 この74種類について、さらに絞り込みを行うために、qPCRによる遺伝子発現解析を行った。我々は、これまでの研究から、ニジマスの精原幹細胞は、フローサイトメーター解析により検出することができるSPと呼ばれる分画に濃縮されることを見出している。そこで、今回同定した、74種類の遺伝子が、SP分画の細胞で高発現しているか否か解析した。その結果、3遺伝子が、非SP細胞に比べ、SP細胞において、有意に2倍以上の高発現をしていることが明らかになった。これらの遺伝子こそが、魚類(ニジマス)における、精原幹細胞のマーカーであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精原幹細胞マーカー遺伝子の候補として、3遺伝子にまで絞り込むことに成功した。これまで、フローサイトメーター解析により、精原幹細胞が濃縮しているSP分画を用いた遺伝子発現解析だけでは、濃縮純度の問題から、ここまでの絞り込みには至らなかった。よって、Quartz-seq法を用いた、本解析は、非常に有効なものであったと思われる。 一方、組織における発現解析においては、遅れが見られるが、マーカー遺伝子の候補を3遺伝子まで絞り込むのに成功したことは、今後の解析において、大きな前進であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、絞り込んだ3遺伝子について、精巣における発現を解析することにより、発達段階の異なる精巣組織において、精原幹細胞の動態を解析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
qPCRで効率良く絞り込みを行うことができたこともあり、試薬等の支出を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度、絞り込んだ3遺伝子について、詳細な発現解析を進めるための抗体の作成などに使用していく予定である。
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