研究実績の概要 |
(1) 間質細胞特異的発現遺伝子のパスウェイ解析: in situ hybridization法による局在解析で莢膜・間質細胞特異的な発現が確定したNid1, Col3a1, Spon1, Aspnの4遺伝子について、遺伝子オントロジーエンリッチメント解析、およびパスウェイ解析ツールでの解析結果や既知の文献情報を基にこれらの分子経路を予測した。その結果、Nid1, Col3a1は細胞外マトリクスの形成や細胞接着などに関わること、Spon1は細胞の分化や血管形成に、Aspnは細胞増殖や形態形成の制御に関わることがそれぞれ予測された。 (2) マウス卵巣、および、卵胞培養系による莢膜・間質細胞特異的発現分子の生理機能解析: (1) の結果を基に、卵巣および二次卵胞の培養系において特異抗体を用いて標的分子の活性を阻害することで生理機能解析を行った。その結果、三次元卵胞培養系においてSpon1抗体処理により莢膜細胞層の形成が阻害された。またAspn抗体処理では莢膜細胞層の形成と卵胞成長がほぼ完全に阻害され、さらに、それらのうちの約30%の卵胞が収縮した。AspnはTGF-β1およびBMP-2に結合し、内因性阻害分子として機能することが知られている。そこでAspnによる卵胞成長制御がTGF-β/ BMPシグナル伝達経路を介するか否かを明らかにするために、Aspn抗体処理卵巣抽出試料を用いてp-Smad2/3およびp-Smad1/5/9抗体を用いたウエスタンブロット解析を行った。その結果、Aspnの阻害によりSmad2/3およびSmad5のリン酸化が促進されたことから、AspnはTGF-β1/ BMPシグナル伝達経路を阻害することで卵胞成長制御において重要な役割を果たしていることが示唆された。
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