研究課題/領域番号 |
15K18572
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
藤森 千加 基礎生物学研究所, 生殖遺伝学研究室, 特別協力研究員 (50750775)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メダカ / 生殖腺 / AMH |
研究実績の概要 |
本研究では抗ミュラー管ホルモン(AMH)シグナル変異体メダカであるhoteiを用いてAMHシグナルによる生殖腺サイズの調節機構を明らかにすることを目的としている。平成27年度において、主に次の2点について研究を進展させることができた。 1. 生殖腺体細胞のトランスクリプトーム解析の準備 Amhおよびその受容体であるAmhr2は、生殖腺体細胞に発現していることが知られている。そこで、生殖腺体細胞を蛍光で可視化させたトランスジェニックメダカを用いて、野生型とhotei変異体生殖腺体細胞のトランスクリプトームを比較することを計画した。当該年度では、トランスジェニックメダカの卵巣から細胞を解離し、セルソーターを用いて生殖腺体細胞を特異的に分取する条件を確立することができた。また、高純度のRNAを精製することができ、現在トランスクリプトーム解析の準備を進めている。 2. 皮下移植時の生殖腺サイズ調節機構の調査 生殖腺を移植したときに、その大きさを感知してサイズ調節を行う機構が存在するか、また、hotei変異体でのその機構を持つかどうかについて調査することを計画した。当該年度では、メダカの皮下に生殖細胞および生殖腺体細胞に蛍光ラベルを持つトランスジェニックメダカの生殖腺を移植し、その移植片の蛍光が少なくとも2週間は維持されることを示し、メダカの皮下移植実験系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画ではトランスクリプトーム解析まで行う計画であったが、そのための卵巣細胞解離条件およびセルソーターを用いた分取条件の検討にやや多くの時間を費やすことになった。しかし、これらの条件検討は、より高品質のRNAを用いて信頼性の高いトランスクリプトーム結果を得るためには重要であり、今後の解析ならびに実験を進めるにあたって非常に意義のあることであったと考えられる。 また、皮下移植は生殖腺サイズ調節機構を生体を用いて確かめることができ、生殖腺サイズの感知機構および細胞分裂を調節する機構がどのような特徴をもった因子により機能しているのか知ることができる実験系である。この実験系を確立したことで、今後の研究を大きく進展させることができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度以降は以下の研究を進めていく計画である。 1. 生殖腺体細胞のトランスクリプトーム解析 昨年度に引き続き、野生型とhotei変異体生殖腺体細胞からRNAを回収する。十分量のRNAが得られたらトランスクリプトーム解析を行い、野生型とhotei変異体での発現を比較する。それにより、生殖腺サイズ調節に関与する遺伝子およびシグナル経路を探索し、機能欠損個体を作出してその関与を調査する。 2. 皮下移植時の生殖腺サイズ調節機構の調査 hotei変異体で移植した生殖腺のサイズ調節が行われているかについて、hotei変異体と野生型をドナーもしくはレシピエントとして用いた場合の、移植片の生殖細胞および生殖腺体細胞の増殖率を比較することによって明らかにする。また、ドナーとレシピエントの組み合わせを変えて生殖腺サイズ調節機構が機能しているかを確かめることにより、生殖腺サイズの感知および細胞の分裂にどのような因子が関与しているかを1. で得たトランスクリプトームの結果と照らし合わせて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
11. 現在までの進捗状況 に記したように、当該年度では計画していたトランスクリプトーム解析を行わなかったため、そのために申請していた当該助成金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
12. 今後の研究の推進方策 に記したように、トランスクリプトーム解析を次年度に行う計画であるため、当該助成金を次年度分と合わせて使用する。
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