研究課題/領域番号 |
15K18573
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
宮園 貞治 旭川医科大学, 医学部, 助教 (50618379)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 天敵 / ピラジン / 恐怖 / 嗅覚 / 嗅上皮 / 鋤鼻器 / すくみ / ストレス |
研究実績の概要 |
被捕食動物は、天敵の匂いに対して本能的に恐怖を感じて様々な行動・内分泌・自律神経の変化を示す。このような恐怖反応は、主嗅覚系と鋤鼻系の2つの主な嗅覚系によって制御されると予想されているが、現在のところ物質レベルでこれを証明した報告はない。我々が見出したオオカミの尿に含まれる恐怖誘発物質である3種のピラジン類を混合して提示すると、マウスは忌避やすくみ行動などの恐怖反応を示す。また、その嗅覚一次中枢である嗅球において主嗅球だけでなく副嗅球でも神経活動に応答して誘導されるc-Fosタンパク質の発現が見られる。このことから、ピラジン類に対する恐怖反応は、主嗅覚系と鋤鼻系の両嗅覚系を介して引き起されることが示唆される。そこで、これら2つの嗅覚系の恐怖反応に対する機能的役割について調べた。そのために、硫酸亜鉛の鼻腔内投与によって主嗅覚系を遮断したマウスと、鋤鼻器を外科的に切除して鋤鼻系を遮断したマウスを用意し、これらの処理をしたマウスにおいて恐怖反応がどのように変化するかを調べた。行動(忌避、接触、すくみ、毛繕い、立ち上がり、危険確認)、内分泌(血中コルチコステロン・ACTH濃度)、自律神経(心拍、血圧、体表面温度)のそれぞれの変化について合計11種の恐怖反応について測定した。その結果、いくつかの恐怖反応は、どちらかの嗅覚系を遮断することによって見られなくなった。また、立ち上がりや危険確認行動は、どちらか片方の嗅覚系を遮断すると見られなくなった。このことから、2つの嗅覚系が恐怖反応の誘発の際に異なる役割を担っており、両方の嗅覚系が相互作用することによって様々な恐怖反応が正常に引き起されることが明らかになった。両嗅覚系の相互作用システムの解明につながる重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね研究実施計画に記載したスケジュール通り研究が進行しており、新たに派生した研究課題についても取り組み始めているので。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ予定通り進行しているので研究の大幅な変更はないが、計画していた研究から派生した研究課題について今後取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新たに派生した研究課題に取り組むために、当初の研究計画を変更したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究を遂行するための設備・装置はほぼ揃っている。そこで、試料調製・解析のために必要な免疫組織化学染色実験および薬物の脳内微量注入実験に関連する試薬や消耗品を購入する。また、研究成果発表のための交通費・宿泊費や論文投稿費として使用することを計画している。
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