研究課題
動物が生存していく上で、危険に対して恐怖を感じて適切に対応することは重要である。マウスは、天敵の匂いを嗅ぐと、逃避やすくみなどの危険を回避する恐怖行動を示すだけでなく、ストレスホルモンの分泌や血流の変化などを伴う生理的な恐怖反応も示す。このような生理的な恐怖反応は呼吸系や代謝系などを変化させることで、恐怖行動がより効率的に行えるようにすると考えられる。つまり、恐怖行動は恐怖反応によって増強された効果を発揮するといえるが、その脳内機構については不明な点が多い。我々がオオカミの尿から見出した天敵の匂い成分であるピラジン化合物は、マウスに様々な恐怖行動や恐怖反応を引き起こすこと、またこの化合物はマウスの2つの主な嗅覚系である主嗅覚系および鋤鼻系を介して脳神経を制御していることを過年度までに明らかにしている。最終年度である平成29年度は次のような成果を得た。1.生理的恐怖反応であるストレスホルモン(コルチコステロン)の分泌は、主嗅覚系を機能阻害しても維持されたが、鋤鼻系の阻害により6割程度に低下した。2.生理的恐怖反応である抹消血管の収縮は、鋤鼻系を機能阻害しても維持されたが、主嗅覚系の阻害により見られなくなった。同様の変化は、末梢血管の収縮と相関して生じると考えられる体表面温度の低下についても起こった。3.忌避やすくみなどの恐怖行動は、2つの嗅覚系のいずれか片方を阻害すると減弱もしくは検出されなくなった。また阻害時には、脳内の分界条床核および視床下部前核における神経活性が領域特異的に減弱した。以上のことから、生理的な恐怖反応は、これらの脳の特定領域の神経活動を活性化し、恐怖行動を増強すると示唆される。
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