研究課題/領域番号 |
15K18576
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
高原 輝彦 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (10536048)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | オタマジャクシ / 化学シグナル / ケミカルコミュニケーション / 捕食ー被食関係 / 水圏生態系 |
研究実績の概要 |
本研究では、両生類のオタマジャクシ(被食者)13種の生態的特徴に着目し、それらの種間比較を通して、これまで未解明であった水圏の被食者が捕食者を検知するために受信する化学シグナルの特性を明らかにすることを目的としている。 H27年度は、ニホンアマガエル、ツチガエルに加えて、ニホンアカガエル、ヤマアカガエル、トノサマガエル、シュレーゲルアオガエル、モリアオガエル、カスミサンショウウオの8種のオタマジャクシについて、また、捕食者として使用するギンヤンマの幼虫(ヤゴ)について、実験に使用する個体を安定的に確保できる体制を整えた。そして、これらのオタマジャクシを用いた水槽飼育実験・行動観察実験を適宜行い、捕食者(ヤゴなど)由来の化学シグナルに対するレスポンスのメカニズムの解明を進めている。また、オタマジャクシの防御反応を誘導する捕食者の排泄物などに由来する化学シグナルを同定するために、ヤゴを畜養した水サンプルの効率的な収集・保存方法の確立も進めている。分析機器などを使用した化学分析とバイオアッセイを併用して、化学シグナルの特性の絞り込みを進めている。 これまで、水圏生態系において多種の被食者の防御反応を誘導する捕食者由来の化学シグナルについての解明はほとんど行われていない。本研究によって、捕食者の化学シグナルに対する被食者種間のレスポンスと化学シグナルの相違を明らかにすることで、ケミカルコミュニケーションが水圏の生物群集の種構成にどのような影響を及ぼしているのか、その一端の解明に貢献することが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H27年度から代表者が研究機関を異動したため、研究計画立案時に前所属先で予定していた実験動物の採集場所を新規に調査することを余儀なくされた。また、異動に伴った実験環境の整備に時間が必要になった。このため、H27年度の初期の課題として設定していた行動実験・飼育実験の開始がやや遅れてしまった。しかし現在までに、実験動物を安定的に確保できる採集場所の特定、および、行動実験・飼育実験の環境を整えることができ、随時予定していた実験にも取りかかっている。さらに、地元研究機関などからの情報提供などの協力を取り付けることができたため、今後は加速度的に実験データの集積を進めることができると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
H28年度は、前年度からの水槽飼育実験・行動観察実験を継続するとともに、蓄積されたビデオデータの解析なども随時行う。さらに、ヌマガエルやニホンイモリなどを含めた両生類5種についても実験を行う予定である。得られた成果については国際学術論文や学会などで発表する他、一般市民向けのサイエンス・カフェなどでも紹介していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、設備備品費として計上していた凍結乾燥機・真空ポンプ・ロータリーエバポレータが、H27年度からの新規所属先で共通機器などとして利用することができたため、購入しなかった。また、デジタルビデオカメラについては、今年度はすでに所有していた機種を使用することで対応できた。そのため、未使用分を次年度の消耗品などの予算として使用する。
|
次年度使用額の使用計画 |
H28年度は、昨年度までに得られたデータの解析から必要となった追加データの取得を加速度的に進めるために、新たにデジタルカメラを購入する予定である。また、いくつかの実験を並行して行うため、それに伴って必要となる水槽などの消耗品費などの諸費用として利用する予定である。
|