研究課題/領域番号 |
15K18579
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
太田 茜 (久原茜) 甲南大学, 自然科学研究科, 研究員 (50410717)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 温度受容 / C. elegans / 低温耐性 / GPCR |
研究実績の概要 |
温度は生体応答に影響を与える重要なファクターである。我々は、線虫の温度に対する適応現象に関して、フェロモン感知ニューロン(ASJ)が温度を感知することを報告した (Ohta, Ujisawa et al., Nature commun, 2014)。このASJ感覚ニューロンにおいて、ヒトの嗅覚や視覚の情報伝達に必須である3量体Gタンパク質が温度情報伝達に関与することが見つかったため、このASJニューロンを実験系として、3量体Gタンパク質の上流で機能すると考えられる温度受容体の単離を目指して解析をおこなっている。具体的には、線虫のゲノム中に存在する約1600個のGPCR遺伝子のRNA干渉を温度適応の表現型を指標に進めた。昨年度、幾つかのGPCR遺伝子について、RNA干渉法を用いてノックダウンを行い、低温適応に異常を引き起こす遺伝子候補を得た。そこで、本年度は、前年度にRNAiで異常が観察された系統の遺伝子に関して、各遺伝子の発現細胞の同定をおこない、ノックアウト変異体を作製し、変異体の低温耐性の表現型を解析した。また、1つの変異体についてはASJのカルシウムイメージングを行ったが正常であった。その理由として、得られた遺伝子が予想外にも、これまで知られていたASJ温度受容ニューロン以外の感覚ニューロンで発現していたためである。順遺伝学的に単離された系統に関しては、責任遺伝子の染色体上での詳細なマッピングを進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの解析から、ASJ感覚ニューロンにおける温度受容には、ヒトの視覚や嗅覚と同様の3量体Gタンパク質が必要であることが明らかとなった(Ohta et al., Nature commun, 2014)。そこで、3量体Gタンパク質の上流で機能する可能性の高い、7回膜貫通型のGタンパク質共役型の温度受容体(GPCR型温度受容体)の単離を目指し、本申請者らが見つけたASJによって制御される線虫の低温適応のシンプルな表現型を利用した。GPCR遺伝子について、本年度は、前年度にRNAiで異常が観察された系統の遺伝子に関して、各遺伝子の発現細胞の同定をおこない、ノックアウト変異体を作製し、変異体の低温耐性の表現型を解析できた。一方で、得られた遺伝子が予想外にも、これまで知られていたASJ温度受容ニューロン以外の感覚ニューロンで発現していたため、新たに機能するニューロンを同定する必要が出てきた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、RNAiで異常が観察された系統の遺伝子に関して、各遺伝子の発現細胞の同定と、ノックアウト変異体を作製し、Ca2+イメージング解析を進める。これまで得られた候補遺伝子の幾つかが、ASJ温度受容ニューロン以外の感覚ニューロンで発現していたため、新たに低温耐性に関与するニューロンを同定する解析もおこなう。単離されたGPCR型温度受容体候補の遺伝子に関して、本来発現していない細胞で異所的に発現させ、温度応答性のない細胞が温度に応答するようになることを測定する。 順遺伝学的に単離された遺伝子の機能に応じて、関連遺伝子変異との遺伝学的優位解析から機能を決定する。 順遺伝学的に単離された系統に関しては、責任遺伝子の同定後、分子生理学的解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はより効率的に研究を遂行するために研究の遂行に務めたため、興味深い結果が得られた。当初計上していた国際学会旅費などに関して、出産により急遽使用変更があったため、その分の未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
カルシウムイメージングを引き続き行う予定であるため、そのための解析費用を予定している。その他、解析の進捗状況に応じて、線虫実験の消耗品が増減するため、適宜消耗品の発注を行い使用を計画している。
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