<研究課題①>熱ストレスがカタユウレイボヤの遺伝子発現に与える影響 投稿論文の査読での批判に対応するため、タイプAとタイプBの2タイプの異なったハイブリッドで、次世代シークエンサーによるトランスクリプトーム解析を行い、異なった発生緩衝を示すが遺伝型の差がない集団間での遺伝子発現の差を比較した。その結果、およそ2000遺伝子モデルで、これらの2集団での遺伝子発現レベルにおける差が観察された。現在これらの遺伝子モデルから発生関連遺伝子を抽出し、qPCR法を用いた確認作業を行っているところである。 <研究課題②>魚類での小胞体シャペロンの機能解析 ゼブラフィッシュから卵、受精卵、及び胚を採集し、dnajc3aおよびdnajc3bの発現量をqPCR法により解析した。その結果、dnajc3aではゼブラフィッシュのひとつの卵もしくは胚につき0.0005~0.001ngの発現量が見られたのに対し、dnajc3bでは0.0001ng以下と、非常に低いレベルでの発現しか確認されなかった。また、ゼブラフィッシュでdnajc3aおよびdnajc3bの機能解析をMOノックダウンによって行ったところ、dnajc3aのみで発生に顕著な影響が現れた。次に、メダカおよび昨年度英国で採集したニジマスの卵からもmRNAを抽出し、dnajc3aの発現量を比較したところ、ニジマスではメダカやゼブラフィッシュに比べ、発現が10分の1以下と、大変低いことがわかった(P < 0.0001)。ゼブラフィッシュやメダカは、温暖な環境に適応し、30度前後で正常発生するのに対し、ニジマスは18度以上になると正常発生しない。これらのことから、dnajc3aの発現量が、温度環境に対する適応をコントロールしていることが示唆される。
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