免疫プロテアソームサブユニットPSMB8はプロテアーゼ活性を有し、MHCクラスI分子上に提示される抗原ペプチドの産生に関与している。軟骨魚類と条鰭類のPSMB8遺伝子にはアミノ酸配列で約20%もの違いが認められる二系統(A系統とF系統)が存在し、条鰭類では二型性を示す対立遺伝子として約4億年以上にわたり種をまたがって維持されている。また、この二系統は軟骨魚類ではパラログとして存在し、肉鰭類と一部の条鰭類では、F系統を欠き、A系統内からF系統様を対立遺伝子として再獲得している。 本年度は、PSMB8の二型間の機能的な違いを検証するため、前年度に確立したアッセイ系を用い多種の合成ペプチド基質に対する切断特異性の比較を行った。その結果、A型のPSMB8を含む免疫プロテアソームは構成型のプロテアソームに比べてキモトリプシン様活性が亢進している一方、F型のPSMB8を含む免疫プロテアソームは減弱していた。このことから二型間で切断特異性に違いがあり、C末端のアミノ酸残基が異なるペプチド断片をMHCクラスI分子に供給していることが示唆された。 PSMB8の他にプロテアーゼ活性を有する免疫プロテアソームサブユニット(PSMB9とPSMB10)が存在する。硬骨魚類にはさらにPSMB9-likeとPSMB10-likeが存在し、アミノ酸配列からプロテアーゼ活性を有することが示唆されている。これら2種のサブユニットそれぞれに対する抗血清を作製し、ウエスタンブロットにより培養細胞から精製した免疫プロテアソームにPSMB9-likeとPSMB10-likeが組み込まれサブユニットとして機能していることが明らかとなり、硬骨魚類のプロテアソームは他の脊椎動物のものに比べ多様化していることが示唆された。
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