研究実績の概要 |
自然環境は実験室の環境と異なり日周、天候や季節などによって変化する。たとえば植物は、昼の間、光合成を行って生長し、夜間は従属栄養的に恒常性を保つ。また昼は光合成に由来する酸化ストレスに晒されるが、夜間は受けない。このように条件が変化する日周周期において光合成活性と細胞周期進行の関係は必ずしもわかっていない。 これまで真核藻類において、概日リズムによって昼に光合成活性が最大になること、夜に細胞分裂が限定されていることが分かっていた。この制御が失われると、細胞は過度の酸化ストレスに晒される。概日リズムは光合成と細胞周期進行(DNA複製と染色体分配および細胞分裂)を時間的に分離させることで、安全な細胞増殖に寄与していると考えられた(Miyagishima, Fujiwara, Sumiya et al., 2014)。一方で、申請者らは、光合成活性の変化が、細胞内の酸化還元状態を変化させ、概日リズムに影響を与えることを見出した。この結果は、葉緑体からのレトログレードシグナルと細胞時計のリズムが協調して概日リズムを形成していること可能性が生じた。しかしながら、細胞時計がどのように酸化還元状態を感知しているのかは全く不明であった。時計タンパク質自身は酸化還元状態を感知しないことが判明したため、時計タンパク質と相互作用するレドックスタンパク質を探索した。その結果、結合タンパク質を1つ発見し、CBPと命名した。CBPと時計タンパク質との結合は日周周期によって変わり、夕方に最大になった。また、レドックス状態が日周周期によって変化することが予備結果として得られたことから、CBPが光合成に由来する細胞質の酸化還元状態の変化を細胞時計に伝えている可能性が考えられた。
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