研究課題
多くの真核藻類は、昼間に光合成産物を用いて細胞生長を行い、光合成の起こらない夜間に細胞分裂を行う。これは概日リズムに制御された現象で、光合成由来の酸化ストレスのない時間帯にDNA複製や細胞分裂を行い、安全に細胞増殖を行うことに寄与していると考えられる。この機構により、真核藻類は、細胞増殖において好気代謝エネルギー変換によるメリットを最大化していると推察できる。平成29年度は、単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolaeを研究材料に用い、概日リズムの形成メカニズムを調べるために時計を司る転写因子の解析を行った。時計遺伝子をホモロジーサーチにより絞り込み、遺伝子欠損株を作成して、明暗周期下の遺伝子発現リズムを網羅的に調べた。得られたトランスクリプトームデータからは、光合成や代謝関連遺伝子の発現強度の低下や、細胞周期制御下にある遺伝子の同調的な遺伝子発現が失われていることがわかった。次に、時計転写因子の遺伝子発現制御メカニズムの一旦を調べるために、細胞内局在を調べた。その結果、日周において特定の時間にのみ細胞核に局在し、この変化によって転写因子としての活性が制御されていることが推察された。さらに日周においてリン酸化レベルが大きく変わることが明らかになり、これが何らかの制御に関わっていることが予想された。さらに、時計転写因子に結合するタンパク質をプロテオーム解析によって明らかにした。これらのことから、時計タンパク質の活性は多重に制御されているとことが予測された。これらの知見は、細胞時計あるいが、どのように代謝関連遺伝子の発現や細胞周期進行の制御を行い、安全な細胞増殖と関連しているのかという問題を理解することに役立つと考えられる。
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