研究課題
本研究では、寄生植物の収斂進化を可能とした分子基盤を明らかにするため、独立に進化した寄生植物種を対象に大規模トランスクリプトーム解析を利用した分子遺伝学的解析を行う。平成27年度計画内で設定していた寄生植物カナビキソウ、ヤドリギ、スナヅルの栽培系はいずれにおいても確立することができなかったが、カナビキソウについては野外から十分量のサンプルを得ることができたため、RNA-seq解析を行った。この野外からのサンプルは、種同定が困難な宿主の根を含む組織のため解析が困難であったが、生物学的反復を増やした実験デザインとBioinformatics解析上での厳密なフィルタリングを行うことにより、カナビキソウ由来のトランスクリプトームデータを取得することができ、高い精度のDe novo assembled contigsを得ることに成功した。加えて、先行して行ったストライガとネナシカズラのトランスクリプトームに対して、カナビキソウのデータを比較することで、寄生のキー遺伝子候補をさらに絞ることができた。そのうち候補遺伝子一つについて、機能破壊のCRISPR、過剰発現、転写抑制SRDX、プロモーター活性の解析用コンストラクションを行い機能解析の準備を進めた。また当該年度で計画していたストライガとネナシカズラの形質転換系の確立においても幾つかの条件検討をしたが実用できるほどの改良に至らなかった。そこで代替案として計画していたハマウツボ科植物コシオガマでのHairy root 形質転換系を利用することにした。一方で、このコシオガマは本研究のトランスクリプトーム解析の対象ではなかったが、機能解析に利用する上でも網羅的遺伝子発現データは必要な情報になるため、コシオガマの吸器形成における詳細なトランスクリプトーム解析を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
幾つか実験上で難解な部分があったが、いずれも計画当初における想定していた代替案により目的通り研究計画を進めることができた。また得られた結果が期待以上だったので、さらに翌年度の計画の内容を先取りして進めることができた。
カナビキソウ及びコシオガマのトランスクリプトームプロフィリングを原著論文として発表する。本プロジェクトで取得したすべての寄生植物のトランスクリプトームデータを統合的に解析して、系統を超えて寄生植物が吸器形成に利用する遺伝子制御ネットワークの構造を推定する。これらの解析で得られる、及びすでに得られた候補因子についてコシオガマのHairy root 形質転換系を利用した機能解析、及び非寄生植物のシロイヌナズナでの解析を通して、吸器形成で働く遺伝子制御ネットワークを制御する上流因子が進化上繰り返し変化することで寄生植物の収斂進化が生じる可能性を検証する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
New Phytologist
巻: 210 ページ: 694-708
10.1111/nph.13776
Plant Physiology
巻: 169 ページ: 2030-2047
http://dx.doi.org/10.1104/pp.15.01229
Frontiers in Plant Science
巻: 6 ページ: 1060
http://dx.doi.org/10.3389/fpls.2015.01060
Plant Morphology
巻: 26 ページ: 43-50
Briefings in Functional Genomics
巻: 14 ページ: 275-282
10.1093/bfgp/elv001
巻: 6 ページ: 366
http://dx.doi.org/10.3389/fpls.2015.00366
巻: 168 ページ: 1152-1163
http://dx.doi.org/10.1104/pp.114.256404
PLOS Genetics
巻: 11 ページ: e1004953
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pgen.1004953