研究課題/領域番号 |
15K18593
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
西井 かなえ 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (50743770)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遺伝子マップ / 次世代シーケンス / 茎頂分裂組織 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
本年度は、遺伝子マップ作成に向けた実験植物集団の育成を主に行った。ストレプトカルプス属では、中心ロゼット種は茎頂分裂組織様構造を示すが、偏心ロゼット種は茎頂分裂組織を持たない。この茎頂分裂組織様構造の遺伝的制御要因を明らかとするため、茎頂分裂組織様構造を示す中心ロゼット種Streptocarpus kentaniensisと、それを持たない偏心ロゼット種Streptocarpus rexiiの大規模F2集団の育成と、その形質評価を行った。植物体の育成は、エジンバラ植物園にて共同研究として行われた。発芽後より約10か月間、300個体のF2植物体を用いて、2週間毎に植物体の写真を撮影、葉数、花芽形成、果実形成、茎頂様構造の有無などを記録した。これらのデータは、今後のQTL解析を行う上で非常に重要となる。形質評価後、前年度に試行した改変CTAB法により、大量DNA抽出を300サンプルより行った。この抽出したDNAを用いて、平成29年度に大規模RADseqを行う予定である。 同時に、F2集団の親サンプルであるS. kentaniensis とS. rexiiのRNAseqを行った。RNA抽出法を検討し、実生、栄養成長シュート、花芽、花茎、根よりRNA抽出を行った。150base pairのpair end法にて、IlluminaHiseq4000を用いてRNAseqを行い、データを得た。あわせて、S. rexiiのゲノムシーケンスをRNAseqと同様に150base pairのpair-end法にてHiseq4000により行った。得られたデータをSOAP de novoプログラムを用いてde novoアッセンブリを行った。ゲノムアッセンブリデータは、RADseq解析の際にレファレンス配列として用いる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大規模植物体育成と、その形質評価のため、エジンバラ植物園の協力を得ることができた。そのため、300植物体を発芽から開花まで無事に育成できた。前年度試行した改変CTAB法も有効であり、RADseqに用いることができる十分な量と質のDNAを得ることができた。CTAB法ではゲノムシーケンスに用いることのできる質のDNAが得られなかったが、マグネットビーズを用いたInvitrogen社のcharge switchキットのプロトコールを改変し、さらにフェノール法で精製することによりゲノムシーケンスを執り行うことができた。ゲノムシーケンスデータは、RADseq解析を行う上でマーカー検出率を向上させるため非常に有用である。RNAseqのため、RNA抽出法をいくつか試し、Invitrogen社のTrizolとPure link キットを組み合わせることにより、RNAseqに用いることのできるRNAが得られた。より多くの遺伝子情報をRNAseqより得るため、様々な時期、器官からRNA抽出を行った。そのため得られたデータは広範な遺伝子情報を含むと考えられる。アッセンブリ後のトランスクリプトームデータは、遺伝子マップ作成後にQTL解析をおこない、その部位の遺伝子情報を得るために用いる予定である。このように、本年度は今後の解析を向上させるための多くの基礎データを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度抽出した大規模F2集団のDNAを用い、RADseqを行う予定である。RADseqデータが得られた後、de novo assembly解析、およびゲノムシーケンスデータを用いたreference-based解析を行い、遺伝子マーカー作成と同時にジェノタイピングを行う。このデータを用いて遺伝子マップを作成する。遺伝子マップ作成後、形質データと合わせてQTL解析を行う。QTL解析により、ストレプトカルプス属の中心ロゼット種で茎頂分裂組織を制御する染色体部位を特定できることが期待される。 本年度RNAseqのデータが得られたため、今後Trinity、AbySS-TransなどのRNAseq用のアッセンブリプログラムを用いてde novo assemblyを行い、Streptocarpus rexiiとStreptocarpus kentaniensisのトランスクリプトームデータを得ることで、QTL解析後の機能遺伝子推定が容易となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ゲノムシーケンス、RNAseqをエジンバラ植物園と共同で行ったため、分子生物学実験試薬代、植物栽培費用を削減することができた。BioSSのF. Wright博士、エジンバラ大学の博士生Mr Y. Chen氏の協力を得ることができ、人件費・謝金を削減することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の論文発表・学会発表時の経費として使用する予定である。
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備考 |
ストレプトカルプス属をはじめとしたイワタバコ科研究を、エジンバラ植物園、ミラノ大学、國立台湾大学と共に行っている。BioSSのF. Wright博士、エジンバラ植物園及びエジンバラ大学の博士生Y. Chen氏とともにコンピューター解析を行っている。
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