研究課題
平成29年度は、引き続き日本産Theonellidae科カイメン類の新規標本の採集を行いながら、採集した標本から形態情報の抽出や各種遺伝情報を得ることに注力した。この結果、沖縄本島北部の海底洞窟から、分子系統解析からはTheonellidae科内に入るのが確実ながらも形態情報からは属不明のカイメンが新たに2種、そしてTheonella属の未記載種が少なくとも1種見つかった。この属不明な2種については、1属1種しか知られておらず原記載以降見つかっていないSiliquariaspongia属の可能性がある。この洞窟は、最奥部が水面から出て空洞になっており、水面直下が淡水の影響を強く受けるアンキアライン洞窟とも呼べる環境にある。本研究は、アンキアライン洞窟からのTheonellidae科カイメン類の初めての報告となる。また、Theonellidae科内の系統関係を推定する上で重要となるTheonellidae科の姉妹群の探索を行ったところ、本調査で見つかったCallipelta属の1未記載種が含まれるNeopeltidae科の可能性が出てきた。今後、より精度の高い系統解析を行って姉妹群を突き止めたい。過去の研究からTheonella mirabilisと同定されていたカイメンについて、形態情報や天然化合物情報から明らかに別種と考えられる2集団を見いだしたが、これら2集団のミトコンドリアゲノムのCO1遺伝子の塩基配列は同一であった。また、細胞核ゲノムのITS領域の塩基配列にゲノム内変異が見つかったことから、前年度の結果同様、この領域を系統解析やDNAバーコーディングに用いることができないことが判明した。
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