マメ科植物―根粒菌共生系の宿主特異性の変遷を調べるために、マメ科高山植物の共生根粒菌のゲノム解析を行っている。昨年度までに、オヤマノエンドウ (Oxytropis japonica) およびイワオウギ (Hedysarum vicioides) の共生根粒菌は共生遺伝子群を染色体上ではなくプラスミドに有していること、日本の山域5か所で宿主植物種ごとに共生プラスミドが保存されていること、カナダ北極圏で単離されたOxytropis arctobia と日本のオヤマノエンドウの共生根粒菌の共生プラスミドは一部しか相同性が無いことを明らかにした。今年度は、同属宿主植物間における共生根粒菌の共生プラスミドの保存性を調べるために、北海道でOxytropis属3種およびHedysarum属1種を新たに採取した。宿主植物の系統および根粒菌の系統をそれぞれのバーコード遺伝子で調べた後、それぞれの宿主と共生する代表根粒菌を1株ずつ選抜し、PacBio RS II によるゲノム配列の取得を行った。共生プラスミドの保存性を調べたところ、同属宿主植物間でかつ宿主植物の生育地が近い菌間で高い相同性を有することが認められた。この結果は根粒菌共生プラスミドが宿主マメ科植物の移動分散に同調することを示唆している。さらに宿主植物の生育地が離れるほど共生プラスミドの保存性が低くなることは、共生プラスミドの一部の領域のみが同属宿主植物と共生関係を築くことに必要であることを示唆する。今後は保存領域がコードしている遺伝子の機能を詳細に調べる予定である。
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