研究実績の概要 |
様々な分子系統的位置にいるサンゴの発生様式が,実は大きく2つに分かれることが明らかになった(Okubo et al. 2013)。その2つとは、長らく分類形質が不明であったイシサンゴ目のサブグループであるComplexクレードとRobustクレード(Romano & Palumbi 1996, 深見氏総説の図1を参照)に相当する可能性を示唆する、胞胚腔をもつグループと、もたないグループである(Okubo et al. 2013)。分子系統学的解析で得られていた2つのクレードの差異は、生息環境の影響をあまり受けることのない発生胚の短期的な形態にも現れていたと考えられる。そこでOkubo (2016) は、発生様式と分子系統解析の結果を分類形質として、イシサンゴ目で多系統に出ていた既存の亜目に属する科を全て再構成し、2つの新亜目を提唱した。その第一の亜目は、発生過程で胞胚腔がない若しくはほとんど見られず、分子系統解析でcomplexに属するサンゴである。静かにいつのまにか内側が満ちていく原腸形成の特徴から、シズカテマリ亜目(Suborder Refertina Okubo 2016)と名付けた。また、第二の亜目は、明らかな胞胚腔が見られ、分子系統解析でrobustに属するサンゴである。丸型の胞胚がまるで波に浮かぶ風船のようである様子(図1F-L)から、ナミフウセン亜目(Suborder Vacatina Okubo 2016)と名付けた。
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