研究課題/領域番号 |
15K18600
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
三井 裕樹 東京農業大学, 農学部, 准教授 (40613138)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 葉形制御 / 細胞増殖 / 細胞サイズ / トランスクリプトーム / オーキシン |
研究実績の概要 |
本研究では、渓流植物の細葉形態をモデルとして、植物の葉形態形成を制御する分子メカニズムを解析する。本年度は、細葉と対称的な広葉形質を持つ近縁分類群を用いて、比較解剖学的解析、葉形態形成を制御する遺伝子の探索を行った。 細葉・広葉変異の比較解剖学的解析:一般的に植物の葉身伸長においては、伸長初期には葉肉組織の細胞数の増加が著しく、次第に細胞サイズが拡大することで葉身拡大が進行していくと考えられている。しかし、キク科のホソバハグマ(細葉型)では、葉身の伸長に伴い縦(長さ)と横(幅)両方向で表皮細胞や柵状細胞のサイズが小さくなっていっており、対照的に近縁種キッコウハグマ(広葉型)では、葉の伸長に伴って細胞サイズが大きくなった。細胞増殖によって発達したホソバハグマの細葉では、葉の伸長に伴って細胞サイズが減少することが明らかとなり、渓流植物が特異な葉身発達のしくみをもつことが示された。また、細葉と広葉の変異は、茎頂で葉原基が発生したあと、比較的早い段階で特徴的な維管束パターンが形成されることで生じていた。 葉形態形成に関わる遺伝子の探索:上記の解析で明らかになった葉形態変異の発生パターンをもとに、葉身の①発生段階、②成長段階、③成熟段階の組織からRNA を抽出し、トランスクリプトーム解析(RNA-seq 解析)により全発現遺伝子の同定、各成長段階で発現量の比較解析を行った。その結果、約95,000個の遺伝子配列を決定した。細葉成長時には、細胞骨格・細胞壁の形成に関わる酵素やタンパクをコードする遺伝子が活性化していた。また、葉の発生初期においてはオーキシンやジベレリンの調節に関わるタンパクをコードする遺伝子が活性化していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年次計画通り、本年度は解剖学的解析および遺伝子発現解析を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
網羅的な発現遺伝子解析で得られた結果をもとに、細葉/広葉形態が発生、発達する成長ステージで特徴的に発現する遺伝子を、インフォマティクス解析により絞り込んでいく。これらの成果をまとめて、平成28年度の前半に論文投稿したい。 上記の解析で抽出された候補遺伝子について、発現局在解析を行う。先行研究から葉形変異を制御する因子としてオーキシン関連遺伝子の働きが明らかにされており、トランスクリプトーム解析でもこれらの遺伝子が特異的な発現を示していた。そこで、オーキシンの極性輸送と生合成に関わる遺伝子、それを制御する転写因子について詳細な発現解析を行う。平成28年度は、葉身形成時におけるオーキシン輸送体およびその調節因子の局在を蛍光染色法により可視化するための系を確立したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予算どおりに執行できている。次年度繰越額はごくわずかである。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度同様に、予算内で適正な執行を行っていく。
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