研究課題/領域番号 |
15K18601
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
長野 由梨子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生物多様性研究分野, 研究員 (30512917)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 真菌 / Cryptomycota / 化学合成生態系 / 鯨骨 / 深海熱水域 |
研究実績の概要 |
平成27年度(平成28年度ー29年度は研究を一時中断)までに行った研究により、深海化学合成生態系の存在する鯨骨域堆積物サンプルでは、鹿児島湾とブラジル沖という地理的にも物理的にも非常に異なる両2地点において、既存のデータベースの配列とは相同性を示さない未知真菌群が優占するという事が解明されていた。しかし、これらの解析は、IonTorrent PGMによりITS rRNA遺伝子領域の短い配列を用いて行ったもので、得られた配列情報から未知真菌群の系統的な位置を決めるのは困難であった。そこで、平成28年度は同じサンプルについて、18S rRNA遺伝子領域を用いて次世代シーケンサーMiseqにより再解析を行った。得られた配列データの多様性解析や系統解析を現在進めている。 また、本年度は鹿児島湾熱水域堆積物3サンプルから真菌類の培養分離・同定作業を行った。周辺熱水温度が最も高かった堆積物サンプルからは真菌類は分離されず、その他2サンプルからは、新種も含め他の深海域サンプルからはこれまでにあまり培養分離されていない接合菌類(Mucor sp.、Rhizomucor sp.) などが分離された。これらの分離株サンプルを含めた深海環境由来真菌株からの新規有用物質の探索なども北里大学生命科学研究所の研究協力者と共同で行い、抗ミズカビ活性を有する新規化合物や抗腫瘍活性を有する新規化合物などを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
深海サンプルの真菌多様性解析、未知系統群の解明に繋がる解析、深海真菌群からの有用物質の探索、そこから得られた成果の論文化などが進み、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き得られた深海サンプルの真菌多様性解析を進めて行くと共に、深海鯨骨域に優占している事がわかっている未知真菌群について、その系統位置について詳細な解析を進める。また得られた成果の論文化などを進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度ー29年度に育児休業取得により一時研究を中断したため、次世代シーケンサー解析費用や学会参加費用などを使用せず、次年度使用額が生じた。 未使用額は主に、次世代シーケンサー解析、培養関連試薬の購入、学会参加費用、また実験補助者の雇用費用として使用する。
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