研究課題/領域番号 |
15K18602
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
渡部 裕美 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生物多様性研究分野, 技術主任 (50447380)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 系統地理 / 幼生分散 / 化学合成生態系 / 西太平洋 / インド洋 / 深海 / 熱水噴出域 |
研究実績の概要 |
本年度は、本研究の核となる系統地理学的解析に必要な塩基配列情報を取得するとともに、本年度実施されたインド洋熱水噴出域の調査によって新たな生物標本の取得と浮遊幼生の生態情報の収集を行った。当初、解析対象としていた動物群のうちBathymodiolus属、Alviniconcha属については、海外の研究グループが解析結果を公表したことを受け、解析対象から除いた。Lepetodrilus属、Shinkailepas属、Munidopsis属、Neolepas属、Eochionelasmus属については配列データの取得を行った。また、解析に併せて保管されている生物標本の確認を行ったところ、複数の新種が西太平洋海域に分布することが明らかとなった。本年度は、南西諸島海域およびマリアナ海域の深海化学合成生物群集から6種のProvanna属およびDesbruyeresia属腹足類を、マリアナ海域の深海化学合成生物群集からPhyllochaetopterus属多毛類を発見したことで、統地理学的解析の対象を増やすことができた。これにより、当初の予定より精度の高い解析が期待できる。予備的な系統解析からは、分類群によって系統の分岐パターンが異なり、すべての化学合成生物群集の構成種が一義的にインド半島の衝突やスンダ列島の形成によって分断される訳ではないことが示された。これまでに明らかになった浮遊幼生の生態学的な知見からは、深海化学合成生物群集の幼生分散過程はいくつかのパターンに区分できることが予見され、予備的な系統解析の結果と一致した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、すでに取得されている標本からのDNA塩基配列情報の収集とインド洋熱水噴出域における生物標本の収集と浮遊幼生の生態調査を実施できた。また年度当初に南西インド洋海嶺熱水噴出域の調査を実施したイギリスの研究グループの協力を得ることができ、航海の成否に関わらず研究を推進できる布石を打つことができた。自身の健康上の理由からインド洋調査航海に参加できなかったため、沖縄科学技術大学院大学のMary Grossmann博士に代理乗船を依頼し、作業を行っていただいた。さらに、標本の観察・採集だけではなく、熱水噴出域周辺における浮遊幼生の分布・生態データを取得することができた。また、本プロジェクトで雇用した研究支援パートタイマーのべ2名と協力し、予定していた塩基配列データの取得を行うことができた。以上のことから、本研究は、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き当初の研究計画に則り、研究支援パートタイマーと協力して系統地理学的解析に必要な情報を収集するとともに、データ解析を実施する。また、沖縄科学技術大学院大学を訪問し、深海化学合成生物群集の地理的分断仮説の検証を行う。これらの結果をまとめ、次年度後半には論文としてまとめ、成果を公表したい。
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