本研究は,インド洋と西太平洋の深海化学合成生物群集の交流を地理的に分断した過程を明らかにするため,分子系統解析とプランクトン幼生の生態的特徴に基づき遺伝子交流可能範囲を推定するものであった.本研究では複数の分類群に関してインド洋と西太平洋をはじめとする深海化学合成生物群集に分布する系統群を中心とした分子系統解析を実施することによって,本研究開始時に提唱していた「海洋の陸地化に伴う系統群の分断および種分化」よりも,プランクトン幼生の輸送を左右する海洋構造の変化の方が,海洋生物の種分化さらには多様化に対してより大きな影響を与えていることを示した.
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