研究課題/領域番号 |
15K18620
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
椿 玲未 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, ポストドクラル研究員 (10735905)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 共生関係 / 海綿動物 / 二枚貝 |
研究実績の概要 |
本課題は、お互いが起こす水流を利用し合う相利共生関係にあるカイメンと二枚貝(ホウオウガイ)を対象として、その相利共生関係の実態とその維持機構を明らかにすることを目的とする。ホウオウガイは幼貝の時にカイメンの体表上に定着し、カイメンが貝殻の上を覆うように成長していくことで最終的には腹縁の一部を除いた全てがカイメンの中にすっぽり埋まってしまう。フナクイムシなど一部の二枚貝では基質に穿孔する能力を持っているが、ホウオウガイは定着した後は運動性を完全に失ってしまうため、カイメン体内でのホウオウガイの分布を決定するのはホウオウガイではなくカイメンである。 そこで2015年度は「ホウオウガイはカイメンの構造補強の役割を果たす」という仮説を検証すべく、カイメン体内でのホウオウガイの分布と水路の3次元的な分布を可視化し、解析する手法を開発した。具体的には、X線CT装置でカイメンとホウオウガイの集合体を撮影し、立体構築像を得た。得られた画像に基づき、各カイメン個体内部に共生する全てのホウオウガイの重心と、カイメン部分のみの重心、そして両者の集合体全体の重心を比較した結果、これら3点はほぼ一致した。これはホウオウガイがカイメンの体内で均一に分布しているということを強く示唆する結果であり、ホウオウガイがカイメンの構造補強という役割を果たすという仮説を支持している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ当初の予定どおり、2015年度の目標であった「ホウオウガイはカイメンの構造補強の役割を果たす」という仮説の検証を行うための手法が確立できたため、おおむね順調に進展していると言える。しかしまだサンプル数は十分でないため、仮説の是非を結論づけることはできなかったので、サンプル数を増やして仮説検証を続ける必要が有る。
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今後の研究の推進方策 |
まずは2015年度に得られた結果をデータを補強したのちに論文化する。それと並行して、カイメン体内の水路と二枚貝から流れ込む水流の関係についても数値流体解析などシミュレーションをおこない、水路形態が最適化されているかどうか検討する。なお、カイメン体内でのホウオウガイの分布を調べるために撮像したX線CT像は、カイメン水路の構造を観察するには解像度が足りないため、ホウオウガイの水流を受ける部位だけを切り出してより精細な観察が可能なマイクロフォーカスX線CTを用いて撮像する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室での実験・データ解析等を通じた研究手法の開発に重きを置いたため、当初の予定よりもフィールド調査へ行く回数が少なくなってしまったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は今年度開発した手法によりスムーズに解析を行うことができるので、フィールド調査を行うための旅費として使用する。
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