前年度までにX線CT装置を用いて得られたホウオウガイが多数共生しているモクヨクカイメン属の1種Spongia (Spongia) sp. 6コロニーの画像データを、3Dデータ解析ソフトAmiraを用いてホウオウガイが共生しているカイメンについて、カイメン体内の水溝系(水路網)、カイメンの水溝系以外の部位、ホウオウガイの殻、ホウオウガイの殻の内部の空所(すなわちホウオウガイの殻以外の部位)それぞれの体積を計測した。その結果、体積比の個体差は大きく、特にカイメンの水溝系とそれ以外の部位の比率のばらつきは先行研究で調べられている他の種のカイメンよりもかなり大きかった。その個体差が何に由来するのかについては実験個体数が十分でないため明らかにできなかったが、ホウオウガイとの共生が関係している可能性があるため、すでにX線CT撮影した個体を追加解析して個体数を増やす予定である。 また、カイメン体内および周囲の水流を計測する実験系を確立するために飼育していたタマカイメン属の1種Tethya sp.を対象とした実験も行い派生的に興味深い結果が得られた。タマカイメン属の1種はカイメンの通常の流れ創出機構である襟細胞の鞭毛運動に加え、体全体を収縮させてポンプのように水を吐き出すことで知られている。この収縮運動の長期的なリズムの変動はすでに先行研究で報告されているが、2個体が癒合する際に各個体のリズムがどう変動していくかについてはまだ知られていなかった。そこで水槽内にTethya sp.を2個体ずつ静置して、その収縮リズムの推移をタイムラプス撮影を行って調べた。その結果、癒合に至るペアと、接触はするものの癒合には至らないペアがあり、癒合しないペアでは収縮リズムの同期が見られたとしてもそれは一時的なもので、それに対して癒合に至るペアの場合は安定して同位相で同期したのち、癒合することが明らかになった。
|