本研究の目的は、①チベット集団の高地適応に関わるデニソワ人(旧人類)由来のEPAS1遺伝子多型がどのように現生人類集団に伝播したか、②高地適応に関わるEGLN1遺伝子多型が低地集団の生理反応にどのような影響を及ぼすか、を明らかにすることである。デニソワ人由来のEPAS1遺伝子多型は、デニソワ人の遺伝情報を多く残す(4-6%)メラネシア集団からは検出されなかった。これは、この遺伝子多型が他の現生人類集団と分岐した後にチベット集団のみに広がったことを示唆する。また日本人では、2つのEGLN1遺伝子多型と動脈血酸素飽和度(SpO2)の値、もしくはその反応時間(潜時)との間に関連がみられた。
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