研究課題/領域番号 |
15K18626
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
高橋 実鈴 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 助教 (20738091)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | microRNA / 転写因子 / イネ / 種子根 |
研究実績の概要 |
イネのOSHB遺伝子はClass III Homeodomain Leucine Zipper (Class III HD-Zip)遺伝子ファミリーに分類され、植物の発生の制御に重要な転写因子をコードしている。OSHB遺伝子はmicroRNA166(miR166)認識配列を持ち、miR166により負に制御されている。本研究は、イネ種子根においてmiR166に制御されたOSHB遺伝子の発現が、種子根の太さ(皮層形成)に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。 本年度は、種子根の太さの決定に関与するOSHB遺伝子を明らかにするために、種子根が太くなる変異体においてOSHB遺伝子の発現量解析を行った。その結果、種子根が太くなる変異体の種子根においてwild typeと比較して発現の上昇しているOSHB遺伝子を特定し、種子根の太さに関与するOSHB遺伝子を同定した。また、miR166に制御されたOSHB遺伝子の発現が、種子根の太さに及ぼす影響を明らかにするために、miR166に認識されない改変型OSHB遺伝子をもつイネを作出し、その表現型の解析を行った。当初、改変型OSHB遺伝子をもつイネは根が太くなることが予想されたが、実際は根の短い表現型を示した。よって、イネの種子根におけるOSHB遺伝子の発現は、種子根の太さだけでなく、長さの決定にも関与していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は種子根の太さとOSHB遺伝子の発現量の関係を明らかにするため、wild typeに比べて種子根が太くなる変異体を用いて、イネに5コピー存在するOSHB遺伝子の発現解析を行った。その結果、種子根の太さに関与するOSHB遺伝子を同定することができた。また、miR166に認識されない改変型OSHB遺伝子をもつイネを作出し、その表現型の解析を行った。改変型OSHB遺伝子をもつイネは根が太くなることが予想されたが、実際は根の短い表現型を示した。
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今後の研究の推進方策 |
種子根の太さや長さに影響を及ぼすと考えられる2つのOSHB遺伝子に着目して、今後の研究を進める。 具体的には、種子根におけるOSHB遺伝子のin situ hybridization実験を行い、OSHB遺伝子の種子根における時空間的発現を調べる。in situ hybridization実験でシグナルが検出ができない場合は、OSHB遺伝子のプロモーターからmiR166認識配列までをGFPに繋いだコンストラクトを作成し、コンストラクトを導入したイネの種子根において発現場所を調べる。またCRISPR法により作出した改変型OSHB遺伝子をもつイネの種子をカルス培養し、OSHB遺伝子の二重変異体が得られた場合は、その表現型を解析する。 以上により、OSHB遺伝子の発現が種子根の太さや長さの決定に及ぼす影響を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
イネ種子根においてmiR166に制御されたOSHB遺伝子の発現が、種子根の太さに及ぼす影響を明らかにするために、miR166に認識されない改変型OSHB遺伝子をもつイネを作出し、その表現型の解析を行ったところ、改変型OSHB遺伝子をもつイネは根が太くなることが予想されたが、実際は根の短い表現型を示した。そのため、研究計画を変更し、来年度まで研究期間を延長してOSHB遺伝子が種子根の太さや長さに及ぼす影響を明らかにする追加実験を行う。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度までに明らかになった種子根の太さや長さに影響を及ぼすと考えられる2つのOSHB遺伝子に着目して、次年度に追加実験を行う。 OSHB遺伝子の種子根における時空間的発現を明らかにするために、種子根におけるOSHB遺伝子のin situ hybridization実験や、OSHB遺伝子のプロモーターからmiR166認識配列までをGFPに繋いだコンストラクトを作成し、コンストラクトを導入したイネの種子根において発現場所を調べる実験を行う。またCRISPR法により作出した改変型OSHB遺伝子をもつイネの種子をカルス培養し、OSHB遺伝子の二重変異体が得られた場合は、その表現型を解析する。
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