研究課題/領域番号 |
15K18627
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
藤田 大輔 佐賀大学, 農学部, 准教授 (80721274)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イネ / 葉身 / 籾数 / 多様性 / 発現解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、以下の3つの研究目的から構成されている。(1)籾数増加に関わるSPIKEの原因変異の特定と機能解明を行う。(2)自然変異を超える新規対立遺伝子の創出を目指す(3)他の籾数増加に関わる遺伝子とSPIKEの相互作用を解明する (1)SPIKE遺伝子座の原因変異の特定と機能解析を行う為に、85品種のSPIKE遺伝子座の領域をPCRで増幅し、シークエンサーにより塩基配列を解読した。栽培イネ内(日本型、インド型、熱帯日本型)のSPIKE遺伝子座の変異を明らかにし、機能に関与する原因変異を推定した。推定した原因変異の領域は、アミノ酸置換に関わっており、このアミノ酸置換は葉の幅との間に相関がみられた。SPIKEは、葉の大きさを制御するNAL1と同座であり、遺伝子の多面的な効果の一部であると考えられる。また、3000品種の塩基配列と表現型のデータベースを用いて、SPIKEの塩基配列を確認したところ、同様の傾向がみられた。このことから、アミノ酸置換が有力な原因変異であると考えられた。また、レトロトランスポゾンの有無による表現型への効果を推定するために最適な材料が、IRRIのジーンバンクにおいて保存されており、今後解析を進めていく予定である。(2)複数のSPIKE遺伝子がIR64へ導入された形質転換が、籾数増加を示す傾向があることから、それらの作出された個体に関する農業形質の調査と解析を網羅的に行った。半定量的PCRの結果、コピー数が増加するにつれて、遺伝子の発現量は増加する傾向にあり、コピー数と籾数や葉の幅の間には正の相関がみられた。また、プロモーター領域の塩基配列を比較した結果、複数の変異箇所がみられた。(3)SPIKE遺伝子座と他の籾数増加に関する遺伝子座との相互作用を解明するため、まずIR24-SPIKEの農業形質への効果を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度から、九州大学から佐賀大学へ異動したため、一部の研究計画を変更せざる得なくなった。また、異動先には、実験に必要な解析器具がなかったため、研究に必要かつ優先順位の高い実験器具や試薬を揃えるのに時間と労力を要した。さらに、異動先の研究室には、形質転換体作出のための設備が無かったため、ゲノム編集による変異創出を行うことは難しいと想定された。そのため、準備することができた器具・試薬を用いて、(1)に関する内容を優先的に進めていき、実験計画以上に進めることができたが、(2)に関する内容は、設備不足が原因のため、計画変更せざるをえなかった。そのため、研究全体としては、計画に沿った最善の試みを行ってきたので、「おおむね順調に進展している」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
3つの研究目的に対する今後の研究推進方策は以下になる。 (1)SPIKE遺伝子座の原因変異の特定と機能解析を行うために、また、異なる遺伝的背景をもつSPIKEの近似同質遺伝子系統であるBR11-SPIKEを用いて、次世代シークエンサーまたは、マイクロアレイによるトランスクリプトーム解析を行う。トランスクリプトーム解析において検出された相互作用のある遺伝子に関する定量的RT-PCRを行い、遺伝子機能を推定する。 (2)新規SPIKE対立遺伝子の創出する為に、形質転換により作出した形質転換体に関して、籾数増加の効果を検証する。ゲノム編集による変異創出を行うことは難しいと想定された。そのため、既存の形質転換帯を用いて、それらの再評価を行うことにより、より籾数が増加した植物体を作出する方向性で研究を進めている。複数の遺伝子が導入された形質転換体を用いて、農業形質が向上する原因について解析を行う。具体的には、SPIKEと相互作用のある遺伝子の定量的RT-PCRを行う。 (3)SPIKE遺伝子座と他の籾数増加に関する遺伝子座との相互作用を解明する為、得られたF2集団において、マーカー選抜により集積系統を選抜し、選抜個体を圃場に移植し、農業形質を評価する。
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