研究課題/領域番号 |
15K18630
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木富 悠花 東京大学, 農学生命科学研究科, 特任研究員 (70746502)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イネ / 根伸長角度 / QTL |
研究実績の概要 |
作物にとって深根性は干ばつ時に土壌深層の水を獲得する上で重要な形質である。申請者の研究グループでは作物で初めて根伸長角度に関する遺伝子DRO1を単離・同定した。DRO1は機能型で深根となり、それによりイネの干ばつ回避能力を高めることがわかった。根系改良によるさらなる干ばつ回避能力の向上のため、本研究課題では新規な根伸張角度遺伝子qSOR1やDRO1の遺伝経路上にあると推察されるDRO3の解析を進め、イネの根伸長角度に関する遺伝機構の解明を目指す。 qSOR1は地表根(水田で一部の根が地表面上に伸長する形質)を形成する品種であるGemdjah Beton(GB)と地表根を形成しないササニシキの組換え近交系統群を用いたQTL解析から見出された。GBのqSOR1候補遺伝子はタンパク質コード領域内の1塩基置換によりナンセンス変異が生じていたため、GBにおいて本候補遺伝子は非機能型となっていると考えられた。そこで上流配列を含むササニシキ型(機能型)qSOR1全長配列をGBに導入したところ、GB の地表根形成が抑制されていることを確認できた。また、(国研)農業生物資源研究所が保有するTilling 系統からqsor1変異体をスクリーニングして表現型解析をしたところ、親品種のコシヒカリよりも浅根となったミスセンス変異系統を1系統得ることができた。この系統におけるミスセンス変異は、三次元構造予測からqSOR1タンパク質の構造変化をもたらすと推測された。以上の結果より本候補遺伝子がqSOR1であると結論付けられた。 qSOR1の組織別発現部位をRT-PCRで調べたところ、qSOR1は根端に加えて基部茎葉節および花序においても発現していた。根伸長角度に関わる根端での発現をさらに解析すると、qSOR1は浅根根端よりも深根根端での発現が高いことがわかった。またin situ hybridizationで空間的発現パターンを解析したところ、qSOR1はコルメラで特異的に発現していることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の年次計画あったqSOR1のRNAi系統の作製など達成できていない項目もあるが、明らかにしたい結論を導き出すには十分な結果が得られている。DRO3の解析に関しては、詳細マッピング用の解析集団の作製を計画通りに進めている。それに加え、DRO1、qSOR1およびDRO3の各NILの作製並びに集積系統の作製も計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度はまず、qSOR1においてオーキシンによる発現制御機構が存在するか否かを明らかにする。両者に相互関係が見出された場合、オーキシンシグナル伝達経路のどの位置でqSOR1が機能しているのかを調べる。またqSOR1とDRO1は機能が非常に類似しているが発現部位が異なることから、プロモータースワップ実験により両遺伝子産物の根伸長角度に対する作用の相違点を類推する。DRO3に関しては作製を進めている組換え固定系統を用いて詳細マッピングを行ない、候補領域を絞り込む予定である。
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