研究実績の概要 |
作物にとって深根性は、干ばつ時に土壌深層の水を獲得する上で重要な形質である。これまでに申請者の研究グループでは作物で初めて根伸長角度に関する遺伝子DRO1を単離・同定し、DRO1は機能型で深根となることでイネの干ばつ回避能力を高めることがわかった。根系改良によるさらなる干ばつ回避能力の向上のため、本研究課題では新規な根伸長角度遺伝子qSOR1やDRO1の遺伝経路上にあると推察されるDRO3の解析を進め、イネの根伸長角度に関する遺伝機構の解明を目指す。前年度までにqSOR1については単離に成功し、詳細な発現部位の特定に至っている。 申請者の研究グループで単離・同定したDRO1とqSOR1の遺伝学的相互作用を解析するため、IR64背景で両遺伝子の機能型あるいは非機能型をそれぞれ組み合わせた系統を作製し (DRO1/qSOR1, DRO1/qsor1, dro1/qSOR1, dro1/qsor1)、畑圃場で育成して表現型を観察した。これまでの表現型解析より、DRO1は非機能型になるとすべての冠根が浅根となるのに対し、qSOR1は非機能型になると主に細い冠根が浅根となる傾向が認められた。この両遺伝子の根伸長角度に対する作用を踏まえて4系統の根伸長角度を調査したところ、DRO1とqSOR1は根伸長角度に関して相加的な効果を示した。また、これら4系統の根端からRNAを抽出し、DRO1およびqSOR1の発現量を調べた。その結果、DRO1背景とdro1背景間でのqSOR1発現量、およびqSOR1背景とqsor1背景間でのDRO1発現量はそれぞれ差が認められず、互いの発現に影響しあうことがないことが明らかとなった。以上より、DRO1とqSOR1は根伸長角度制御に関して独立な遺伝的経路上で機能していると考えられた。
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