研究課題/領域番号 |
15K18631
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
伊澤 かんな (佐藤かんな) 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (40456603)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ソルガム / 遺伝子導入 / フェルラ酸エステル |
研究実績の概要 |
イネ科作物において、収穫物である重い種子を支えるための地上部の強度維持は収量を左右する重要な因子である。一方で、地上部に強度を付与することは、家畜飼料用途においては家畜体内での分解性を低下させてしまう。このイネ科植物の地上部の強度維持と家畜体内における難分解性の付与には、細胞壁成分の一つであるフェルラ酸-アラビノキシランエステル (FA-AX)が寄与するとされている。本研究では、穀物や家畜飼料、さらにバイオマス資源としての利用が期待されているソルガムの茎葉部を用いてFA-AXの蓄積に関与する遺伝子を特定し、さらにFA-AXの蓄積と細胞壁特性の決定との関連を明らかにすることを目的とする。 これまでに、FA-AX蓄積に関わると推定されるソルガム遺伝子の選抜、RNAi発現抑制コンストラクトの作成、ソルガムへの遺伝子導入条件の検討を行った。本年度は作成した候補遺伝子のRNAi発現抑制コンストラクトのソルガムへの導入と、細胞壁解析に用いる個体を確保するためのT1種子の生産を行った。初めに、作成した4つのコンストラクトについて、それぞれ300以上の未成熟胚を用いて遺伝子導入を試みた。その結果、1つのコンストラクトについて遺伝子導入個体を得ることができた。ソルガムへの遺伝子導入は近年多くの論文が報告されているものの国内では成功例が非常に少なく、昨年度確立した導入方法を用いても効率は未だに低いのが現状である。そのため、今回得られた組換え体の個体数を確保した上で組換え体を解析することとした。バイオトロンで組換え体を半年程栽培し、T1種子を約500確保した。得られたT1種子を発芽させて得られたT1植物においても導入遺伝子が存在していることが確認された。今後は導入遺伝子を持つT1植物を用いて遺伝子発現解析ならびに細胞壁分析を行い、FA-AXの蓄積と細胞壁特性の決定の関連を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、FA-AX蓄積に関わると推定されるソルガム遺伝子のRNAi発現抑制コンストラクトの作成し、ソルガムへの遺伝子導入を試みたが、遺伝子導入個体を得ることができなかった。そのため、遺伝子導入条件を検証し、未成熟胚への温度処理と遠心処理が有効であることを見出した。 本年度は、昨年度確立した遺伝子導入方法を用いて再度RNAi発現抑制コンストラクトの導入を試み、1つのコンストラクトにおいて遺伝子導入個体を得ることができた。さらに解析に用いる個体を確保するためのT1種子を確保できた。また、前年度に確立したソルガムへの遺伝子導入条件に関する論文をPlant Biotechnologyに投稿し、受理された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度確保したT1種子を栽培し、遺伝子発現パターン、細胞壁FA-AXの蓄積パターン、細胞壁特性の解析を行う。以上の解析からFA-AXの蓄積に関与する遺伝子の同定およびFA-AXの細胞壁特性決定における役割の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の物品購入費が当初より抑えられたこと、また、昨年度は遺伝子導入個体の作成が予定通りにいかなかったために、組換え体の解析に係る消耗品購入ができなかった。次年度に繰り越しを行い、論文作成に必要なデータ収集のための解析に用いることとした。 繰り越した予算は、作成した組換え体の遺伝子発現解析および細胞壁成分分析に用いる試薬や機材の購入、および、成果発表にかかる費用に使用する計画である。
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