イネ科作物において、収穫物である重い種子を支えるための地上部の強度維持は収量を左右する重要な因子である。一方で地上部に強度を付与することは、家畜飼料用途においては家畜体内での分解性を低下させてしまう。このイネ科植物の地上部の強度維持と家畜体内における難分解性の付与には、細胞壁成分の一つであるフェルラ酸-アラビノキシランエステル(FA-AX)が寄与するとされている。本研究では、穀物や家畜飼料、バイオマス資源としての利用が期待されているソルガムの茎葉部を用いてFA-AXの蓄積に関与する遺伝子を特定し、さらにFA-AXの蓄積と細胞壁特性の決定との関連を明らかにすることを目的とした。 本年度は昨年に引き続きソルガムへの遺伝子導入条件の改善に取り組むとともに、ソルガム茎におけるFA-AXの蓄積とFA-AX合成に関わる候補遺伝子の発現解析を行った。ソルガムへの遺伝子導入条件については、感染前の未熟胚への熱・遠心処理に加えて培養の後半で特定の試薬を添加することで組換え個体が得られる可能性を見出し、現在再現性の確認を行っている。ソルガム茎におけるFA-AX蓄積については、伸長中の節間を5段階の生育段階別に分けて解析した。その結果、分裂細胞を多く含む若い茎ではFA-AXの蓄積が少なく、細胞伸長や二次細胞壁形成が進むにつれて含有量が増加し続けることが明らかとなった。免疫組織化学的観察より、若い茎では二次細胞壁をもつ原生木部を中心に蓄積が認められ、生育が進むと維管束組織全体や柔組織における蓄積が認められるようになった。これらの結果から、FA-AXは細胞伸長停止後の二次細胞壁形成段階でも合成と蓄積が継続していることが明らかとなった。また、FA-AX合成に関わることが示唆される11の候補遺伝子について発現解析を行った結果、4遺伝子についてはFA-AX合成に関与する可能性が低いことが示唆された。
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