研究課題/領域番号 |
15K18632
|
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
柏木 孝幸 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (40595203)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | イネ / 倒伏抵抗性 |
研究実績の概要 |
本年度の計画に基づき、BSUC11を含む近似同質遺伝子系統 (NIL) の選抜を行った。イネゲノムリソースセンターで配布されているコシヒカリ×カサラス間の染色体断片置換系統であるCSSL234を戻し交雑し、世代促進したBC1F3系統から13個のDNAマーカーを用いて遺伝子型解析を行い、選抜した83個体と親品種を水田圃場で栽培した。表現型解析として、上位部3節間について挫折抵抗を出穂から6週目 (収穫期) に測定した。QTL解析の結果、BSUC11領域に第1節間に関与するQTLが1個、第2節間に関与するQTLが4個、第3節間に関与するQTLが1個検出し、この中に重複するQTLは存在したが、上位部3節間すべてに作用するQTLは確認されなかった。この結果からBSUC11による上位部3節間への効果は複数のQTLによって構成されていることが示唆されたため、NILの候補として見い出されたすべてのQTLを含む位置にドナー由来の染色体断片 (9.8Mbp) を有し、ホモ化されている個体 (NIL-BSUC11) を選抜した。NIL-BSUC11の挫折抵抗は、第1、第2、第3節間でそれぞれコシヒカリの1.3倍、1.4倍、1.1倍であり、CSSL234と比べるとそれぞれ0.9倍、0.9倍、0.8倍であった。本年度の結果から、BSUC11による効果は複数のQTLが関与している可能性が示唆され、これらを含むNILを選抜した。育種への応用を考えると、本年度見い出されたQTLの中からBSUC11が示す作用の鍵となるQTLを明確にし、さらにQTL領域を矮小化する必要がある。次年度ではNILを用いたBSUC11の機能解明とともにホモ化したBC1F4系統を用いたQTL解析によるQTLの選抜及び矮小化が必要と考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は実験材料となる稈物理強度劣化抑制型系統 (NIL-BSUC11) の選抜のため、QTL解析及びドナー由来染色体断片のホモ化確認と表現型解析を行った。その結果として、BSUC11による上位部3節間への作用に複数のQTLが関与している可能性を示唆し、さらに見い出されたQTLを含むNILを選抜した。研究は当初の計画通り進んでおり、順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画に基づき、選抜したNILを用いてBSUC11が稈の物理的特性、稈内の構造性及び非構造性炭水化物蓄積特性、各部位の老化特性に与える影響を解析する。物理特性の解析では本年度に導入した材料試験機を用いて挫折試験及び圧縮試験を実施し、より詳細な物理特性を解析する。炭水化物蓄積特性及び老化特性の解析では出穂期から収穫期までの経時的変化を解析し、物理特性との関係を明らかにする。また本年度の結果に伴う追加実験として、BC1F4系統を用いたQTL解析による主要因QTLの選抜及び矮小化を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究で必要な物品等に請求額のほとんど (99.9%) を使用したが、わずかに未使用額が生じた。未使用額は少額であることから対応できる物品等に限りがあるため、研究費の有効利用を考えて次年度に繰越すことにした。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費は稈内の構造性及び非構造性炭水化物含量及び各部位の老化関連物質の測定とQTL解析のために使用する。炭水化物含量及び老化関連物質の測定では多検体を効率的に解析するための分光光度計と解析に用いるプラスチック系器具と薬品に研究費を使用する。また、QTL解析では主に解析に用いる消耗品に研究費を使用する。
|