研究課題/領域番号 |
15K18632
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
柏木 孝幸 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (40595203)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 倒伏抵抗性 / イネ / QTL / ホロセルロース |
研究実績の概要 |
本年度の計画に基づき、NIL-BSUC11を用いて稈の物理特性、構造性及び非構造性炭水化物蓄積特性、老化特性を解析した。上位部節間の中から第2節間を対象として物理特性の解析を行った結果、コシヒカリは出穂から第2週目に挫折抵抗及び圧縮抵抗の最大値を示した後、4週目以降に物理的強度を低下させた。一方でNIL-BSUC11は4週目以降も挫折抵抗及び圧縮抵抗ともに高く維持していた。物理特性と同様に、第2節間の乾物重及びホロセルロース蓄積においてもコシヒカリは4週目以降低下し、NIL-BSUC11は高く維持した。リグニン蓄積において、NIL-BSUC11はコシヒカリに遅れる様に推移したが、出穂から6週目に同等の蓄積量となった。また、非構造性炭水化物の蓄積特性はコシヒカリとNIL-BSUC11は同等であった。老化の指標として可溶性タンパク質及びクロロフィル含量を比較すると、稈及び葉身でNIL-BSUC11は出穂から4週目以降にコシヒカリよりも高い値を示した。これらの結果から、コシヒカリは出穂から4週目以降の老化に伴い、ホロセルロース含量の低下が原因となって物理的強度が低下するのに対し、BSUC11は老化を遅らせてホロセルロース含量を高く維持することによって4週目以降の物理的強度を高く維持していることが示唆された。本年度は追加実験としてQTL領域の矮小化を行った。BSUC11のカサラス由来の染色体断片をホモ化したBC1F4 19系統を用いて、14個のDNAマーカーによる遺伝子型と上位部3節間の挫折抵抗からQTL解析を行った結果、昨年度見出された4領域のうち1つの領域に3節間の挫折抵抗に関与するQTL (BSUC11d) が検出された。この結果からBSUC11dが主要因となる領域であり、BSUC11領域が1.1Mbpまで矮小化された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は実験材料として選抜された稈物理強度劣化抑制型系統 (NIL-BSUC11) を用いて、BSUC11が稈の物理特性、構造性及び非構造性炭水化物蓄積特性、老化特性に与える影響を解析した。その結果として、BSUC11はコシヒカリで生じている出穂後4週目以降のホロセルロース含量低下を抑制し、蓄積量を高く維持することで物理強度の劣化を抑えて収穫期に強稈性を示していることが示唆された。またQTL領域の矮小化において、見出された4領域から主要因となる1つの領域を特定した。加えて、これまでに得た成果の一部について雑誌論文として発表した。研究は当初の計画通り進んでおり、順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に引き続き、選抜したNILを用いてBSUC11が稈の物理的特性、稈内の構造性及び非構造性炭水化物蓄積特性、各部位の老化特性に与える影響を解析し、本年度得たBSUC11機能の確認を行う。物理特性の解析として材料試験機を用いた挫折試験及び圧縮試験、炭水化物蓄積特性及び老化特性の解析として分光光度計を用いた成分分析を行い、出穂期から収穫期までの経時的変化を解析してBSUC11の機能を明らかにする。またQTL領域の矮小化として、BC1F5系統を用いて主要因QTL領域からファインマッピングを目的とした実験及び主要因領域のみを有するNILの選抜を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の請求額をすべて使用したが、昨年度の繰越分があるため未使用額 (繰越分を加えた請求額の0.04%) が生じた。未使用額はかなり少額であることから研究費の有効利用を考え、昨年度と同様に次年度に繰越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費は本年度と同様に稈内の構造性及び非構造性炭水化物含量及び各部位の老化関連物質の測定とQTL領域の矮小化のために使用する。炭水化物含量及び老化関連物質の測定では解析に用いる薬品、ガラス系及びプラスチック系器具、円筒濾紙等の消耗品に研究費を使用し、QTL領域の矮小化では候補領域からファインマッピングに向けた実験に必要な薬品及びプラスチック系器具に研究費を使用する。
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