本年度の計画に基づき、育成したNIL-BSUC11を用いて稈の物理特性、構造性及び非構造性炭水化物蓄積特性、老化特性を解析した。第2節間の物理特性を解析した結果、コシヒカリは出穂後4週目に挫折抵抗及び圧縮抵抗の最大値を示した後、6週目以降に物理的強度を低下させた。一方でNIL-BSUC11は2週目まではコシヒカリと同等の強度であったが、4週目以降に挫折抵抗及び圧縮抵抗ともに有意に高くなった。乾物重及びホロセルロース蓄積においても物理特性と同様に2週目までコシヒカリと同等であり、その後コシヒカリは低下を示したがNIL-BSUC11は高く維持した。リグニン蓄積において、コシヒカリは出穂後2週目に最大値を示し、その後減少し、6週目にNIL-BSUC11と同等となった。非構造性炭水化物蓄積では、コシヒカリとNIL-BSUC11はともに出穂後2週目まで減少し、その後再蓄積、そして6週目では同等になった。老化の指標として可溶性タンパク質及びクロロフィル含量を比較すると、稈、葉身、葉鞘でNIL-BSUC11は出穂後6週目にコシヒカリよりも高い可溶性タンパク質含量を示し、葉身及び葉鞘ではクロロフィル含量も高かった。これらの結果は昨年と同様に、コシヒカリでは登熟期以降の老化に伴い、ホロセルロース含量の低下によって稈の物理的強度低下が生じるのに対し、BSUC11は老化を遅らせてホロセルロース含量を高く維持し、これにより完熟期の物理的強度を向上させていることが確認された。QTL領域の矮小化のためにBC1F5 系統を用いてQTL解析を行った結果、昨年度と同様にBSUC11d領域にQTLが検出され、さらに各系統の遺伝子型の違いからBSUC11の主効果を示す領域が700kbpまで矮小化された。さらにBSUC11dを含む2.2Mbpのホモ化したカサラス型染色体断片有するNILを選抜した。
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