研究課題
本年度は‘京てまり’の単為結果果実におけるオーキシンおよびオーキシン代謝産物の定量を行った.その結果,‘京てまり’の単為結果果実では開花後にオーキシンおよびオーキシン代謝産物の濃度が上昇することが明らかとなった.昨年度行った発現解析において,‘京てまり’の単為結果果実では開花後にオーキシン生合成遺伝子の発現が上昇することが報告されている.これらの結果から,‘京てまり’の子房ではオーキシン生合成遺伝子の発現上昇により,オーキシン濃度が高まり,それが単為結果を誘導している可能性が示された.また,これまでの研究で‘京てまり’では単為結果性だけでなく強い種子形成阻害が誘導されることが報告されている.そこで,‘京てまり’の交雑後代で単為結果性遺伝子と種子形成阻害の関係を調査した所,‘京てまり’の単為結果性遺伝子を保有する後代において強い種子形成阻害が観察された.このことから‘京てまり’の単為結果性遺伝子はトマトにおいて単為結果性だけでなく種子形成阻害にも関与するする可能性が示された.本研究では,‘京てまり’の単為結果性遺伝子の同定とその作用機構の解明を目指して実験を行った.その結果,‘京てまり’の単為結果性遺伝子が第1染色体上に座乗するMADS-box 遺伝子であることが明らかとなった.‘京てまり’では,レトロトランスポゾンの挿入によりこの遺伝子の発現が抑制され,それがオーキシンやジベレリンの代謝関連遺伝子の発現を変化させることにより単為結果を誘導すると考えられた.本研究で得られた成果は,トマトにおける単為結果誘導機構の全容の解明に資するだけでなく,トマトの単為結果性品種を育成する上で重要な知見になると考えられる.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
The Horticulture Journal
巻: 86 ページ: 487-492
10.2503/hortj.OKD-042