研究課題/領域番号 |
15K18642
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
花田 俊男 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門 リンゴ研究領域, 主任研究員 (30707641)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 植物生産管理技術 / リンゴ / マルドリ / ストレス |
研究実績の概要 |
果樹生産において降雨や土壌の乾燥による樹体内の水分状態変化は果実品質に大きく影響すると考えられている.近年カンキツ栽培では「マルドリ方式」によって適度な乾燥ストレス付与し,高品質果実を生産する方式が実用化されている.しかし,リンゴにおいては乾燥ストレスと果実品質との関連性は詳細に解明されていない.本研究では「マルドリ栽培」をリンゴに適用し,樹体の乾燥ストレスと果実品質の関連性を解明し,高品質果実の生産を可能にする乾燥ストレスコントロール技術の確立を目指す. H27年度は樹体への乾燥ストレス付与が果実品質に影響する時期の特定を目的として試験を実施した.‘さんさ’‘つがる’‘シナノゴールド’‘ふじ’の4品種を用いて,ストレス付与時期として夏期ストレス区(7-8月),秋期ストレス区(9-11月)全ストレス区(7-11月)および湿潤区(ストレス付与なし)を設定した.ストレス付与時は早朝の葉内最大水ポテンシャル(ψmax)が-0.5~-1.0 MPa となるように潅水量を調節し,生育期間中の果実肥大,蒸散速度,および収穫後の果実品質について調査を行った.その結果,蒸散速度は8月をピークに季節変化に伴って減少するが,供試したいずれの品種においても夏期のストレス付与は蒸散速度を著しく低下させ,果実肥大を強く抑制した.また,夏期のストレス付与により湿潤区と比較して収穫時の果実糖度の増加が見られたが,秋期のみのストレス付与では有意な糖度の増加は認められなかった.H28年度は開花時に花芽分化率の調査を実施し,前年の乾燥ストレス付与が花芽分化に及ぼす影響を調査するとともに,ストレス付与については経年試験を継続し,果実肥大を抑制せずに糖度を上げるストレス付与条件について検討を進める計画である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乾燥ストレス付与に伴う樹体の水ポテンシャルや光合成速度の変化,果実肥大パターンの変化等,基礎的データが順調に蓄積している.また,本年度の目的としていた果実品質に影響する乾燥ストレス付与時期が調査したいずれの品種でも夏期(7-8月)であり,収穫時期が11月である‘ふじ’や‘シナノゴールド’においても夏期に乾燥ストレスを付与することによって糖度の高い果実を生産できる可能性を明らかにした.これらのことから研究計画に従いおおむね順調に推移していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は前年の試験で糖度増加の効果が確認された夏期の乾燥ストレス付与について,最適なストレス強度を決定する計画である.夏期の乾燥ストレス付与によって糖度は増加するものの果実サイズも抑制されてしまうため,果実肥大と糖度増加を両立する条件の検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた測定機器が入札の結果安価に購入できたためであり,計画通りの予算執行を行った.
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次年度使用額の使用計画 |
圃場の維持管理に必要な資材、蒸散速度や水ポテンシャルの測定に使用する試薬類等の消耗品購入,学会発表に係る参加費および旅費,論文投稿費用等の支出を計画している.
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