研究課題/領域番号 |
15K18644
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
志村 華子 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20507230)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アスパラガスウイルス / RNAサイレンシングサプレッサー / 種子伝染 / 茎頂分裂組織 |
研究実績の概要 |
植物ウイルスの多くは分裂組織である茎頂組織へ感染できないとされており、宿主のRNAサイレンシングが茎頂組織へのウイルス感染を阻止する役割をもつことが示唆されている。しかしその具体的なメカニズムは明らかになっていない。本研究では、茎頂組織へも感染する種子伝染性ウイルスであるアスパラガスウイルス2(AV-2、Ilarvirus属)に着目し、ウイルスのもつRNAサイレンシングサプレッサーと茎頂組織への移行能力との関連について明らかにすることを目的としている。また、AV-2と重複感染していることが多いアスパラガスウイルス1(AV-1、Potyvirus属)も材料に用いて、AV-1とAV-2のアスパラガス植物体内の局在の違いや重複感染による相互作用があるかについても調べることとした。まず、AV-1およびAV-2の感染性の詳細を明らかにするため、AV-1とAV-2が重複感染しているアスパラガス培養体を用意した。それを用いてAV-1とAV-2の局在をRT-PCRで調べたところ、AV-1はシュート上部で検出されやすく、シュートごとの局在はみられなかった。しかしAV-2はシュートごとに大きく感染程度が異なり、株内の感染率も変動することが分かった。またAV-1のRNAサイレンシングサプレッサーはHC-Proであると予想されるが、その配列は不明であったことから、北海道大学の圃場のアスパラガスから分離したAV-1をクローニングしORF全長の塩基配列を決定した。その結果、これまで一つだけ報告があったAV-1の塩基配列と比べて90%の相同性であることが分かった。さらにAV-1の感染性クローンの構築に成功し、Nicotiana benthamianaでの全身感染性を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで全く分かっていなかったアスパラガス植物体内でのAV-2の感染動態について明らかになりつつあるとともに、その検出の技術改良も進めたことで、検出感度をさらに向上させることができている。また、AV-1感染性クローンの完成により、これまでに作製しているAV-2感染性クローンと一緒に用いることで、AV-1とAV-2の相互作用、特に全身感染性や茎頂組織への感染能(種子伝染性)への影響について調べることが可能になった。また、感染性クローンを用いてRNAサイレンシングサプレッサーを欠失させたり変異させたりする組換えウイルスを作製できるため、AV-1とAV-2の感染性に及ぼすRNAサイレンシングサプレッサーの解析を行うことが可能となる。これらのことから研究はおおむね順調に伸展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によりAV-1およびAV-2の感染動態が次第に明らかになってきたことから、これをふまえて今後はAV-1およびAV-2の感染個体を用いた免疫組織学的観察も行い、組織レベルでのウイルスの感染動態について明らかにしていく。また、RNAサイレンシングサプレッサーを欠失させたものや別のウイルスのものに置換させた組換えウイルスを作製し、これらを感染させた植物体を用いてRNAサイレンシングに関わる遺伝子の発現解析を行い、茎頂組織への感染とRNAサイレンシングサプレッサーの機能の相関について明らかにしていく。またAV-1およびAV-2の感染性クローンを用いて、重複感染が及ぼすそれぞれのウイルスの感染性への影響、特にAV-2の種子伝染性への影響も調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年3月3日に納品を完了したが、支出が平成27年度となったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
シークエンス解析依頼の結果を平成28年3月3日にを納品済み、同年4月に支出予定。
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