アスパラガスに感染する主要なウイルスにはAsparagus virus 1(AV-1)とAsparagus virus 2 (AV-2)がある。AV-1は虫媒伝染、AV-2は種子伝染によって伝搬する。これらのウイルスが単独または重複感染すると、若茎収量の低下や株の経年劣化が早まるとされている。これまでに、ウイルスフリー化に一般的に使われる茎頂培養ではAV-1とAV-2は除去できないことが分かっており、ウイルス感染が分裂組織にまで侵入する可能性が示唆された。本研究では、AV-1とAV-2の感染動態を明らかにするため、免疫組織染色法によってアスパラガス植物体のウイルス局在を調べた。その結果、AV-1とAV-2は表皮付近に多く存在し、また、分裂組織中心への感染はみられなかったが、分裂組織近傍の維管束にまで感染が及ぶことが分かった。また、組織観察に先立ち、RT-PCRにより開花前のアスパラガス雄花を用いてウイルス検定を行ったところ、AV-2に加えてAV-1も葯組織から検出されることが分かった。雄花の発達段階ごとにAV-1とAV-2の感染を調べたところ、AV-2は花芽分化初期から開花直前までの花芽全体で検出され、花粉形成時はタペータムに強い感染がみられた。一方、AV-1は花芽形成初期では感染が弱く、花粉四分子期以降で感染が検出された。これらの結果より、これまでAV-1は虫媒伝染とされていたが、AV-2のように種子伝染する可能性もあることが示唆された。AV-1およびAV-2の感染性クローンを用いて、重複感染が及ぼすそれぞれのウイルスの感染性への影響を調べたところ、上葉での斑点の出現は、AV-1単独感染よりもAV-1AV-2重複感染の株で遅れていた。PCRによるウイルス検定では、重複感染株よりも単独感染株の方がAV-1の上葉移行が早まる傾向があることが分かった。
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