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2015 年度 実施状況報告書

CRISPR/Casシステムによるイネいもち病菌のゲノムワイド遺伝子破壊法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 15K18647
研究機関神戸大学

研究代表者

荒添 貴之  神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (40749975)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワードCRISPR/Cas system / ゲノム編集 / イネいもち病菌 / 遺伝子ターゲティング / ポストゲノム / Pyricularia oryzae / 糸状菌 / 網羅的遺伝子破壊
研究実績の概要

主要作物であるイネに重要病害を引き起こすイネいもち病菌 (Pyricularia oryzae) は,その重要性から植物病原菌で初めて全ゲノムが解読されたモデル植物病原糸状菌である。本研究では,ポストゲノム時代における膨大なゲノム情報を網羅的に解析する手法として,人工ヌクレアーゼCRISPR/Casシステムの糸状菌への最適化とゲノム編集技術を用いたハイスループット遺伝子破壊法の確立を目的とする。
CRISPR/Cas9は標的DNAとguide RNAのハイブリッド領域をCas9ヌクレアーゼが切断する人工ヌクレアーゼである。本ヌクレアーゼシステムを糸状菌に適用するために,Cas9ヌクレアーゼのコドン使用頻度を糸状菌に最適化した。また,guide RNAの高発現化のためにいもち病菌のU6 small nuclear RNAを同定し,その上流配列をRNA polymerase III系プロモーターとして使用した。以上より糸状菌型CRISPR/Casシステムの確立に成功した (Arazoe et al., 2015)。本システムは網羅的遺伝子機能解析を視野にいれ,Golden Gate cloning法 (Cermak et al., 2011) によるワンステップでのヌクレアーゼ作製が可能なように設計している。本システムの利用により,相同組換え修復を介した遺伝子ターゲティング効率を36~100%まで向上させることに成功した。また,相同組換え修復経路の一つであるシングルクロスオーバーを介した高効率標的遺伝子ノックアウト・ノックイン・塩基置換導入法の確立に成功した。一方,相同組換え修復と拮抗的に働く非相同末端結合修復機構を介した標的遺伝子改変では,糸状菌ゲノム特有の性質と考えられる広域に渡る欠失が確認された。本問題を解決するために,ゲノムを切らずに改変する新たな技術開発に着手した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の研究計画では,非相同末端結合修復を介した相同配列を用いない簡易的な遺伝子破壊法の確立とそれを基盤としたゲノムワイドな遺伝子機能解析系の確立を目的としていた。しかしながら,糸状菌ゲノム特有の現象と考えられる広域の欠失が確認された。そこで,ゲノムを切らずに書き換える新たなゲノム編集技術開発に着手し,本技術が糸状菌に対して有用であることを示した。従って,新たなゲノム編集技術開発に成功した点で当初の計画以上に研究が進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

今回構築したベクターはワンステップでヌクレアーゼまたは標的遺伝子改変ベクターが作製できるように設計されている。そこで,本ベクター特性におけるヌクレアーゼ・改変ベクターライブラリー作製の条件検討をおこない,複数の遺伝子を標的とした破壊株ライブラリーの構築をおこなう。破壊株ライブラリーを表現型から解析し,これまで未詳であったいもち病菌の病原性ならびに変異特性に関わる新たな因子の同定を試みる。また本技術を麹菌に応用し,産業への応用展開を視野にいれ研究を進めていく。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [国際共同研究] Jillin University/Kunming University of Sci. and Tech./Zhejiang University(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      Jillin University/Kunming University of Sci. and Tech./Zhejiang University
    • 他の機関数
      3
  • [国際共同研究] Kansas State University/Univesity of Florida/The Ohio State University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Kansas State University/Univesity of Florida/The Ohio State University
  • [国際共同研究] University of Exeter/Plant Biology and Crop Science - PBCS(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      University of Exeter/Plant Biology and Crop Science - PBCS
  • [国際共同研究] Kyung Hee University/Seoul National University(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      Kyung Hee University/Seoul National University
  • [国際共同研究] M.S.University/CDFD(インド)

    • 国名
      インド
    • 外国機関名
      M.S.University/CDFD
  • [国際共同研究]

    • 他の国数
      4
  • [雑誌論文] Tailor-made CRISPR/Cas system for highly efficient targeted gene replacement in the rice blast fungus2015

    • 著者名/発表者名
      Arazoe, T., Miyoshi, K., Yamato, T., Ohsato, S., Arie, T. and Kuwata, S.
    • 雑誌名

      Biotechnology and Bioengineering

      巻: 112(12) ページ: 2543-2549

    • DOI

      10.1002/bit.25662

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 糸状菌のゲノム編集と応用~イネいもち病菌をモデルとして~2016

    • 著者名/発表者名
      荒添貴之
    • 学会等名
      第80回植物学会シンポジウム
    • 発表場所
      沖縄
    • 年月日
      2016-09-16 – 2016-09-19
    • 招待講演
  • [学会発表] 糸状菌型CRISPR/Cas systemの開発とイネいもち病菌における高効率標的遺伝子ノックアウト・ノックイン・塩基置換導入法2016

    • 著者名/発表者名
      大和 澄,荒添貴之,三好健之介,小川哲央,大里修一,有江 力,桑田 茂
    • 学会等名
      平成28年度日本植物病理学会大会
    • 発表場所
      岡山
    • 年月日
      2016-03-21 – 2016-03-23
  • [学会発表] Genome editing in the rice blast fungus with CRISPR/Cas system2015

    • 著者名/発表者名
      Arazoe, T., Nishida, K., Kuwata, S., Kondo, A.
    • 学会等名
      The 6th iBioK Asian symposium
    • 発表場所
      兵庫
    • 年月日
      2015-12-07 – 2015-12-08
    • 国際学会
  • [学会発表] Targeted base exchange-mediated genome editing2015

    • 著者名/発表者名
      Nishida, K., Banno, S., Arazoe, T., Shimatani, Z. and Kondo, A.
    • 学会等名
      BMB2015
    • 発表場所
      兵庫
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
    • 国際学会
  • [学会発表] 糸状菌型 CRISPR/Cas システムを用いたイネいもち病菌における高効率標的遺伝子ノックアウト・ノックイン・塩基置換導入法2015

    • 著者名/発表者名
      荒添貴之,三好健之介,大和 澄,小川哲央,大里修一,有江 力,桑田 茂
    • 学会等名
      第15回糸状菌分子生物学コンファレンス
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-11-19 – 2015-11-20
  • [学会発表] Platinum-Fungal TALENs を用いた麹菌におけるゲノム編集2015

    • 著者名/発表者名
      水谷治, 荒添貴之, 利田賢次, 林梨咲, 大里修一, 佐久間哲史, 山本卓, 桑田茂, 山田 修
    • 学会等名
      第67回日本生物工学会大会
    • 発表場所
      鹿児島
    • 年月日
      2015-10-26 – 2015-10-28
  • [産業財産権] ゲノム配列改変技術における変異導入効率の向上方法、及びそれに用いる分子複合体2016

    • 発明者名
      荒添貴之、西田啓二、島谷善平、近藤昭彦
    • 権利者名
      荒添貴之、西田啓二、島谷善平、近藤昭彦
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2016-085631
    • 出願年月日
      2016-04-21

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公開日: 2017-01-06   更新日: 2022-02-03  

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