研究課題
主要作物であるイネに重要病害を引き起こすイネいもち病菌 (Pyricularia oryzae) は,その重要性から植物病原糸状菌で初めてゲノムが解読された。本研究では,ポストゲノム時代に対応した膨大なゲノム情報を網羅的に解析する手法として,糸状菌型人工ヌクレアーゼCRISPR/Cas9システムの開発とゲノム編集技術を用いたハイスループット遺伝子機能解析手法の確立を目的とした。CRISPR/Cas9は標的DNAとguide RNAのハイブリッド領域をCas9ヌクレアーゼが切断するRNA誘導型の人工ヌクレアーゼである。昨年度はguide RNAのプロモーターとしてRNA polymerase III系プロモーターをいもち病菌ゲノムから取得し,Cas9のコドン使用頻度を最適化することで,糸状菌型CRISPR/Cas9システムの構築に成功した。本システムを用いることにより,相同組換え修復を介した遺伝子ターゲティング効率を36~100%まで向上できた。また,相同組換え経路の一つであるシングルクロスオーバーを選択的に誘導することで,標的遺伝子のノックアウト・ノックイン・塩基置換を高効率に導入する手法を確立した。一方の非相同末端結合修復機構を介した変異導入法では,糸状菌ゲノム特有の性質と考えられる広域に渡る欠失が確認された。本年度は,CRISPR/Cas9システムをさらに応用し,ゲノムを切らずに書き換える新規ゲノム編集技術「Target-AID」の開発と糸状菌への応用・最適化をおこなった。本手法を用いることにより,DNAの切断により生じる広域欠失を抑制し,相同配列を用いることなくピンポイントに塩基置換を誘導すること成功した。本技術はいもち病菌だけでなく麹菌においても有用であり,網羅的な遺伝子機能解析手法に留まらず,新たな分子育種法としても期待できる。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件)
Journal of Biotechnology and Bioengineering
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