1. アブラナ科植物であるシロイヌナズナ野生型の表皮細胞色素体が炭疽病菌の接種に応答して表層側へと出現する現象について、本現象は適応型のアブラナ科炭疽病菌接種時には弱く、不適応型のクワ炭疽病菌接種時には強いことを見出していた。一方で、同じく不適応型のウリ類炭疽病菌の場合は、シロイヌナズナpen2変異体に接種したときのみ同現象が起こるが、アブラナ科炭疽病菌に対するpen2変異体の応答は弱い。平成29年度にはより詳細な解析を行い、クワ炭疽病菌の胞子を蒸留水で十分に洗浄した場合には本現象が起こりにくいが、ウリ類炭疽病菌と同様にpen2変異体に対しては十分に色素体が応答することを見出した。クワ炭疽病菌は周囲の糖により誘導されるメラニン化付着器に依存しない感染モード(HTE)を取りやすいため、培地成分等の混入によりわずかに誘導されたHTEがシロイヌナズナ野生型で色素体応答を起こしていた可能性が考えられた。この点についてさらに言及するため、他の数種の炭疽病菌を同解析に用いたところ、pen2変異体では全て色素体応答がみられたが、野生型では1種を除いて十分な応答は起こらなかった。本現象はPEN2関連免疫の下層に位置すると予想されるため、PEN2関連免疫をわずかでも突破している炭疽病菌が本現象を引き起こすと予想した。 2. 色素体応答は炭疽病菌の貫穿糸を介した侵入行動、もしくはその付随行為により誘導されることを見出していた。平成29年度は、炭疽病菌の侵入点において物理的障壁として形成パピラ(植物免疫の一種)を解析した。その結果、ウリ類炭疽病菌の接種に対して色素体が応答しないシロイヌナズナ野生型と応答するpen2変異体のどちらにおいても、同程度のパピラが形成されていることが明らかになった。このことは、色素体応答とパピラ形成に相関がないことを示している。
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