研究課題
植物は、病原菌の侵入を細胞膜上の受容体で認識し、活性酸素の産生、MAPKカスケードの活性化を誘導し、様々な防御応答を発動する。一方で、病原菌はエフェクタータンパク質を植物細胞内に注入し、宿主の免疫応答を阻害する。申請者はイネ白葉枯病菌のエフェクターXopYがOsRLCK185を標的とし、イネの免疫を抑制することを明らかにした。本研究課題ではOsRLCK185によるイネ耐病性発動機構の分子メカニズムの解明とそれに対抗したXopYによるOsRLCK185の活性化阻害機構の解析を通じたイネ免疫の抑制機構の解明を目的とした。昨年度OsRLCK185がMAPKカスケードの最上流因子であるOsMAPKK11/18と相互作用することを報告した。最終年度では、OsMAPKK11/18発現抑制株を作出し、OsMAPKK11/18が病原菌に応答したMAPKの活性化に関与するかを解析した。OsMAPKK11/18発現抑制株では、キチンに応答したMAPKの活性化が野生株と比較して顕著に減少していた。一方で、OsMAPKK11の欠損株ではキチンに応答したMAPKの活性化は野生株と同等であった。タバコを利用した一過的発現系を利用し、OsMAPKKK18の細胞内局在を解析した結果、OsMAPKKK18は細胞質と膜に局在しており、さらにOsRLCK185と細胞膜上で相互作用していることを明らかにした。申請者は研究期間全体を通じて、OsCERK1- OsRLCK185- OsMAPKKK18- OsMKK4- OsMPK3/OsMPK6のリン酸転移による活性化調節機構を明らかにし、今年度、学術論文として報告した。また、申請者はシロイヌナズナでも同様なシグナル伝達経路が存在することを明らかにしており、本研究課題で明らかにしたMAPKの活性化機構が植物に広く保存されていることが考えられた。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)
Plant and Cell Physiology
巻: 23 ページ: 印刷中
https://doi.org/10.1093/pcp/pcx042
EMBO J
巻: 35 ページ: 2468-2483
10.15252/embj.201694248