• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

しらが病菌によるアワの穂の葉化メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K18650
研究機関公益財団法人岩手生物工学研究センター

研究代表者

小林 光智衣  公益財団法人岩手生物工学研究センター, ゲノム育種研究部, 研究員 (10751539)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード植物病原菌のゲノム解析
研究実績の概要

アワしらが病は、卵菌類の一種(Sclerospora graminicola (Sacc.) Schroet.)によって引き起こされるアワの重要病害である。しらが病菌に感染したアワは生育不良となり、穂では特徴的な葉化病ちょうが誘発される。この表現型の変化には病原菌が生産するエフェクター等の関与が考えられるが、詳細はほとんど研究されていない。本研究では、しらが病菌の全ゲノム解読およびトランスクリプトーム解析を行い、しらが病菌が分泌するエフェクターを同定・解析することにより、葉化病ちょうの発病機構の解明を最終目標とする。
平成28年度は、前年度得られたRNAseq解析の結果からエフェクター候補の解析を行った。エフェクター候補のうち、卵菌類に特有のRXLRモチーフを持ち、感染時に発現が確認されたタンパク質遺伝子について、過剰発現イネ植物を作出して機能評価を行った。現在までに、生育の亢進、生育抑制、細胞死の誘導といった表現型が得られている。
しらが病菌と他の卵菌類との比較ゲノム解析を行った結果、しらが病菌ゲノムには、Jacalin様レクチンドメインを含むタンパク質が多くコードされていることが明らかとなった。さらにその多くがN末端に推定の細胞外分泌シグナルをもち、アワ葉感染初期に発現が誘導されていた。以上から、Jacalin様レクチンドメインを持つタンパク質はしらが病菌の感染初期に機能する可能性が考えられた。
前年度、植物側のRNAseq解析から罹病穂で顕著な発現増加が認められたSiMADS47のプロモーター領域をクローニングし、レポーターとしてルシフェラーゼ遺伝子を連結したキメラ遺伝子を作製し、イネに導入して形質転換培養細胞を作出した。これを材料とし、SiMADS47プロモーター活性に作用するしらが病菌因子のスクリーニングを開始した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

NGS解析の結果を基盤としてエフェクター候補因子の解析に用いる材料の作出および解析を開始した。また、比較ゲノム解析から、しらが病菌に特徴的なJacalin様レクチンドメイン遺伝子を見出した。

今後の研究の推進方策

Jacalin様レクチンドメインタンパク質遺伝子は、感染初期に発現が多く認められることから、病原性因子として機能する可能性が考えられた。そこで、感染初期に誘導されるプロモーターの制御下でいもち病菌に発現させ、病原性の機能解析を行う。また、いくつかの病原性エフェクターはPAMP応答を抑制することが報告されているため、ベンサミアーナタバコ葉に一過的に発現させ、flg22によるROS生成等のPAMP応答に対する影響を評価する。
SiMADS47プロモーター:ルシフェラーゼを導入した、イネ培養細胞を使い、クローニングされたしらが病菌エフェクター候補のうち、SiMADS47プロモーター活性を解析し、その発現変化でスクリーニングを行う。
エフェクター候補の機能解析の機能解析の一環として、イネ形質転換体による表現型の評価を行っているが、今のとこ、穎花の形態変化をもたらす結果は得られていない。そこで次年度では新たにアワのEMSラインを作出し、穎花の形態変化がなくなるような変異体のスクリーニングの材料を整備する。

次年度使用額が生じた理由

論文投稿が年度をまたいだため、繰越し金が生じた。なお、投稿論文はほぼ仕上がっており、近日中に投稿予定である。

次年度使用額の使用計画

英文校閲および論文投稿料として使用する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] アワしらが病菌ではJacalin様レクチンが独自に進化している2017

    • 著者名/発表者名
      小林光智衣・平賀幸江・阿部陽・八重樫弘樹・夏目俊・菊池秀子・齋藤宏昌・寺内良平
    • 学会等名
      第58回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      鹿児島大学 郡元キャンパス
    • 年月日
      2017-03-16 – 2017-03-18
  • [学会発表] アワしらが病菌の全ゲノムシーケンス解析2016

    • 著者名/発表者名
      小林光智衣
    • 学会等名
      農学中手の会
    • 発表場所
      雄琴温泉 湯の宿 木もれび
    • 年月日
      2016-11-10 – 2016-11-11
  • [学会発表] Whole genome sequencing of the oomycete pathogen Sclerospora graminicola and prediction of effector candidates2016

    • 著者名/発表者名
      Michie Kobayashi, Yukie Hiraka, Akira Abe, Hiroki Yaegashi, Satoshi Natsume, Hideko Kikuchi, Hiroki Takagi, Hiromasa Saitoh, Joe Win, Sophien Kamoun, Ryohei Terauchi
    • 学会等名
      2016 IS-MPMI XVII Congress
    • 発表場所
      the Oregon Convention Center
    • 年月日
      2016-07-17 – 2016-07-21
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi