研究課題
アワしらが病菌は、卵菌類の一種(Sclerospora graminicola (Sack.) Schroet.)によって引き起こされるアワの重要病害である。しらが病菌に感染したアワは生育不良となり、穂では特徴的な葉化病徴が誘発される。この表現型の変化には病原菌が生産する因子(エフェクター)の関与が考えられるが、詳細はほとんど研究されていない。本研究では、しらが病菌の全ゲノム解読およびトランスクリプトーム解析を行い、しらが病菌の病原性エフェクターを同定・解析することにより、葉化病徴の発病機構の解明を最終目標とする。平成29年度は、病原性機能解析のために作出したエフェクター過剰発現イネから培養細胞を誘導し、基礎的抵抗反応に対する影響を評価した。その結果、キチン処理に応答して誘導される活性酸素生成は抑制する一方、同時期に誘導されるMAPK活性には影響しない因子が見つかった。しらが病菌を感染させたアワ葉からアポプラスト溶液を調整し、感染現場で分泌されているタンパク質を質量分析で解析したところ、7種のJacalin様レクチンドメインをもつタンパク質(JRL)が同定された。JRLはしらが病菌のゲノム解析から、他の卵菌類と比較して特徴的に多くコードされていた遺伝子である。これらをベンサミアーナ葉に一過的に発現させ、植物の抵抗反応に対する影響を調べたところ、flg22処理に対する活性酸素生成を抑制し、ベンサミアーナに感染する卵菌類であるPhytophthoraの感染を亢進した。以上より、JRLは感染現場であるアポプラストに分泌されて抵抗反応を抑制することが示唆された。
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BMC Genomics
巻: 18 ページ: -
10.1186/s12864-017-4296-z